PETER HAMMILL |
1948年11月5日、ロンドンにて生を受ける。 パブリック・スクールを卒業し、マンチェスター大学に入学(2年で中退)。在学中に組んだバンドがVAN DER GRAAF GENERATOR(以下VDGG)である。1967年にVDGG結成。 VDGG&HAMMILLのディスコグラフィ → VAN DER GRAAF GENERATOR (当サイト内REVIEW) |
私の最も好きなヴォーカリストの内の一人で、この人に対しては尊敬という言葉では足りないくらいに大好きな人です。 VDGGを始めソロ・アルバムも含めて思い入れは並大抵ではありません。 自分の思いを正直に告白するのがアーティストの本質ならば、ハミルこそ真のアーティストと言えるでしょう。 もともと多作な人なので、現在も素晴らしいアルバムを驚くようなペースで発表しています。なんともファン冥利に尽きますね。この先も頑張って欲しいです。 |
THE SILENT CORNER |
EGO -vocals,guitars,keyboards GUY EVANS -drums DAVID JACKSON -sax,flute HUGH BANTON -organ RANDY CALIFORNIA -guitar on M5 PRODUCED BY PETER HAMMILL |
1974年発表の3rdアルバム。 VDGGの活動停止期に怒涛の如く発表された一連のソロ傑作のうちの重要な一角。メンバーはVDGGまんまであり、特にVDGGと呼んでも何も問題はないような作風だ。この辺りも少し謎なのだが、おそらく自己探求のための作品で、VDGGとは区別したかったのだろう。 THE SILENT CORNER(静かな角)and THE EMPTY STAGE(空っぽの舞台)。 ハミルにとってメタファー(隠喩、暗喩)とは解釈の余地を誰のためでもなく残し、聴き手にとっては感情移入の余地が残された有難〜いものである。ただ、恐ろしく難解で感情移入も糞もなく、ただハミルの鬼気迫るパフォーマンスの凄さに圧倒されるのみだ。 アルバム・ジャケットは女性器を表している模様。うーむ、興味深い。 |
M1,MODERN ライブでも頻繁に演奏される代表曲。ノイジー。 M2,WILHELMINA ノイズに塗れて終わる前曲から、静謐なる響きへ。 M3,THE LIE (BERNINI'S SAINT THERESA) 暗い情念をピアノで弾き語り。 M4,FORSAKEN GARDENS 前曲で踏み止まったかのような感情を一歩、歩を進めるかのような感動。とりわけ、フルートの響きがたまらんっす。VDGGそのもの。 M5,RED SHIFT ランディ・カリフォルニア(g)がゲスト参加。後半サイケデリックなモザイク調に変化。 M6,RUBICON アコースティック・ギターによる弾き語り。 M7,A LOUSE IS NOT A HOME とりあえず圧巻の一言。構成、演奏、ハミルの歌の牽引力、凄まじいまでの言葉数。小便がチビルというレヴェルでなく、ウンコまで漏れそうな大傑作。 |
これは重い。 重さに表すとdレヴェルだ。頭上から感情の塊が落っこちてきて、それを受け止めなければならない苦行のように重い。とりわけ、次作(IN CAMERA)と本作の重さは並大抵でなく、リピート不可能。私にとってこの作品は思い入れも並大抵でないのだが一回聴けばしばらくは事足りる。まるで空っぽの心のようなものに、ある種の感情を充電するかのように聴く作品でもある。(詩の内容がよく分からないのにここまで思わせる作品はなかなかない。) 先述したように、サウンドはVDGGと似たようなものでVDGG好きには堪らないものだと思う。それでもノイジーだったりサイケだったり新しい試みがあるが。 人間心理の暗闇のカリスマ的住人「ハミル」による、圧倒的啓示のような作品。 |
OVER |
GUY EVANS -drums NIC POTTER -bass GRAHAM SMITH -violin PETER HAMMILL -vocals,guitars,keyboards PRODUCED BY PETER HAMMILL |
1977年4月発表の6thアルバム。 録音は前年の6月〜7月。発売はVDGGでの再編問題等によるトラブルのため遅れた模様。ベースには初代VDGGのベーシスト、ニック・ポーターが参加、メンバー的には新生VDG(QUIET ZONE期)となっている。1976年の時点でこのメンバーというのが少し謎なのだが。。 ハミルは手痛い失恋の直後だったようで、内容は失恋の歌や当時のハミルの心境を辛辣に語った内省的な作風になっている。パンク・ムーヴメントがどうたらと世の流れには全く関係のないハミルらしい作品で、普遍的な内容を歌わすと彼の右に出る者はいまい、と信じて止まない。ハミルを聴く者にとって避けては通れない作品だ。 |
M1,CRYING WOLF M2,AUTUMN M3,TIME HEALS M4,ALICE (LETTING GO) M5,THIS SIDE OF THE LOOKING GLASS M6,BETRAYED M7,(ON TUESDAYS SHE USED TO DO) YOGA M8,LOST AND FOUND |
この人の作品に一貫している事は、自分と向き合い意思を確かめ、それをただ素直に語るという事だけだと思う。フン、そんなもん他のアーティストも同じじゃねーか、という意見もあるだろうが、個人的にそういうアーティストで真っ先に思い浮かぶのがハミルやジョン・レノン。後はなかなか出てこない。多分ね次元が違うと思いますよ。 M2でのオーケストラとの神秘的で鬼気迫る絡み、M3のハミルの歌のドラマ性には身震い必至、M4の感情のようなアコースティック・ギターの響き、M5の静謐で心の奥底から湧き出る泉のような隋一の透明性を誇るハミルの歌! ただただ、感動。 |
incoherence |
PETER HAMMILL -vox,keyboards,guitar STUART GORDON -violin DAVID JACKSON -saxophones,flutes |
2004年3月発表。 予定されていた来日公演がハミルの病気により中止になり、ファンは不安で揺れた。それからしばらくしてハミルは無事退院し、中断されていたこのアルバムを完成させた。 近年のハミルの作品と同様にリズム隊は無く、軽い打ち込み程度のもので、ハミルの歌を中心に前作より強度感のある演奏が全14曲、切れ目無く1曲として繋げられている。 「incoherence」はつじつまが合わないこと、支離滅裂、粘着性がない、というような意味らしい。公式HPの解説にもある通り、このinという接頭語とcoherenceという語は字体が違うように、区切られている。詩の内容は全体的に大よそ「言葉、会話」について書かれているが、曲を無理やり繋げた事を意味しているのか、inが接頭語ではなく前置詞で逆の事を意味しているのか、または人間が発する言葉の支離滅裂性、強引な(統一感があるように思わせた)会話の事を指しているのかはハミルも言及してはいない。 一つ確実な事は、これは相変わらずハミルらしい作品で、何の心配もなく聴ける、という事だけだ。 |
M1,WHEN LANGUAGE CORRODES M2,BABEL M3,LOGODAEDALUS M4,LIKE PERFUME M5,YOUR WORD M6,ALWAYS AND A DAY M7,CRETANS ALWAYS LIE M8,ALL GREEK M9,CALL THAT A CONVERSATION? M10,THE MEANINGS CHANGED M11,CONVERSE M12,GONE AHEAD M13,POWER OF SPEECH M14,IF LANGUAGE EXPLODES |
幽玄な響きのフルート、エコーがかかりまくったエレピ、いつ聞いても新たな決意を感じさせるようなハミルのヴォーカルが響き渡ると同時に冬の肌を突き刺すような場に降り立ったような感覚を受ける。その後、曲は絶えず変化しながら混沌の様相を呈す。 こんな緊張感のあるハミルのヴォーカルを聞くのはいつ以来だろう、と考え込まずにはいられなかった。バックの演奏もハミルの歌を盛り上げるだけでなく、充分圧迫的で緊張感溢れるものだ。後半は寒空に一人放り出されたかのような孤独感を感じる。終始ハミルのヴォーカリゼーションの吸引力に脱帽する。こんな作品を作れるのはハミルしかいないわけで、そこがまさに孤高の人、いつ聴いても嬉しくなってしまう。だって、2004年ですよ、これ。 |