VAN DER GRAAF GENERATOR

1967年結成。1969年にデビューする。イギリスのアンダー・グラウンド・シーンから突如浮上し、その後は、所謂プログレッシヴ・ロック・グループの代表格として君臨し続けている。
ピーター・ハミルという圧倒的な個性、カリスマ的存在に導かれ、次々と傑作を発表するも、78年に解散する。その後は主にメンバーはソロ活動を主体に現在も活動を続けている。
VAN DER GRAAF GENERATOR(以下VDGG)の作品の核はなんと言ってもハミルである。ハミルの哲学的な歌詞、圧倒的なヴォーカリゼーションが正しくこのVDGGの評価を高めていると言える。演奏能力自体は他のプログレ・バンドと比較すれば若干見劣りするかもしれないが、ハミルの声を知り尽くし、しっかりと支える他のメンバーの力も素晴らしく、非凡なものである。(特にヒュー・バントン、デイヴィッド・ジャクソン)
ちなみに、バンド名の由来は、静電型発電機の発明者ヴァンダー・グラフにちなんで、当時のメンバーだったクリス・ジャッジ・スミスが命名とのこと。

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何を隠そう、私はこのVDGGが非常に大好きで、ここからプログレに一気にハマッていきました。
初期は、かなり難解で長尺なサウンドが主で、活動停止期間をおいてからのいわゆる3部作は、ハミルの内省性が強く出た作品。後期の3部作の方がどちらかと言えば聞きやすいです。一応、プログレ期最高傑作が4thのPAWN HEARTS。
現在出ているBOXでもよいと思うので、とりあえず、未だ聞いたことのない人は、一回VDGGの作品に触れてほしいという気持ちでいっぱいです。もちろん、ハミルのソロも。

 

 

THE LEAST WE CAN DO
IS
 WAVE TO EACH OTHER

GUY EVANS -drums,percussion
HUGH
 BANTON -piano,organ,backing vocals
NICK
 POTTER -bass,guitar
PETER
 HAMMILL -lead vocals,acoustic guitar,piano on 2
DAVID
 JACKSON -alto & tenor saxes,flute,backing vocals

GERRY
 SALISBURY -cornet
MIKE
 HURWITZ -cello
1970年(2月)発表の2nd。マネージャーだったトニー・ストラットン・スミスが設立したカリスマ・レーベルに移籍し、カリスマ第一段作品。2ndとは言っても、実質はプログレッシヴ・ロックとなり、メンバーも黄金期の不動メンバーが揃った再デビュー作。実質的には1stと言っても良いだろう。ハミルのヴォーカルも若さのようなものも垣間見れ、初々しい感がある。しかし、サウンドは紛れもないVDGGのサウンドで、暗く沈みこんでいくようなダークさ、そこから希望を見出すような美しさに包まれている。バロック調を感じさせつつも、この時点ですでに個性的なサウンドを作り出しているのには驚嘆する。
M1,DARKNESS(11/11), 風の中から表れるリズム、静と動のコンストラストが絶妙なハミルのヴォーカル。強力なサックス、それらを支えるオルガンが楽曲を引っ張ってゆく。アグレッシヴな好曲。
M2,REFUGEES, 
前曲のアグレッシヴな空気はまるでなくなり静寂が支配する。宗教的なハミルのヴォーカルがただただ美しい初期の傑作。深く、暗く、ただ希望を求めるハミルの希求力はこの時点ですでに神がかっている。
M3,WHITE HAMMER,
 チャーチ・オルガンの壮厳な響きが、一転して混沌の極みとも言えるぐらいに凶暴化する。静と動のコントラストが見事。デイヴィッド・ジャクソンのサックスが混沌とした強烈な息吹を吹き込んでいる。
M4,WHATEVER WOULD ROBERT HAVE SAID?, 
かなり前衛的な展開の曲で、緊張感溢れる演奏の展開、切り替わりは混沌的。ロバートとはフリップの事だと思われる。
M5,OUT OF MY BOOK, 
非常に牧歌的なフォーク・ナンバー。フルートのさえずり、ハミルの優しげなヴォーカルが絡みあうひと時の休息。
M6,AFTER THE FLOOD, 
変拍子のリズムが躍動感を感じさせる。ノイジーな展開を挟みながら一転、美しいアコースティックな展開や、ジェスロ・タルのようなトラッド色、様々な顔を見せるドラマティックな大曲。
静と動、静寂と喧騒(混沌)、明と暗が常に切り替わる。コントラストの妙。
天地創造の前の神々の語り合いのようにも思わせるような神秘性を感じさせる。ハミルのヴォーカルの存在感はもちろんのこと、デイヴィッド・ジャクソン、ヒュー・バントンを始めとする演奏も実に見事だ。無論、傑作。

 

H to He
Who
 am the only One

GUY EVANS -drums,tympani,percussion
HUGH
 BANTON -hammond and farfisa organs,piano,oscillator,vocals,bass on 2,5
PETER
 HAMMILL -lead vocals,acoustic guitar,piano on 2
DAVID
 JACKSON -alto,tenor and baritone saxophone and devices,flute,vocals

ROBERT
 FRIPP -guitar on 3
NICK
 POTTER -bass on 1,3,4
1970年(12月)発表の3rd。邦題:天地創造。
化学反応によって形作られている宇宙の中で個人の存在を問う、という非常に難解なテーマが掲げられている。これもハミルの自我の探求の軌跡である。
尚、本作にはロバート・フリップがゲストとして1曲ギター参加している。サウンドの構造上、デイヴィッド・ジャクソンのサックスが非常に重要な役割を果たしており、実験的ですらあるヒュー・バントンのオルガン、ハミルのアナーキズム的資質、全てが化学反応を起こしているかのように反応しあう、初期の傑作。
ちなみに、ニック・ポーターは前作をもって脱退し、本作にはゲスト参加。ジョン・アンソニー、プロデュース。
M1,KILLER, かなり力強さを感じさせるオープニングだ。ハミルのヴォーカルに引っ張られていくのが分かる。全体的に演奏はサックスの比重が高く、非常にワイルドだ。しかし、あまり爽快感は感じず、ところどころ混沌に巻き込まれてゆくのが分かる。リズム隊も非常に緊迫感に覆われている。歌詞のような孤独感はあまり感じられないが、そのアンバランスさが魅力といえば魅力。
M2,HOUSE WITH NO DOOR, 
一転して内省の極みともいえるような澄んだバラード作品。ドアのない部屋に閉じこもった自分を歌う非常に辛辣な歌詞である。ピアノ、フルートの響きが美しく、切なく響き渡る。
M3,THE EMPEROR IN HIS WAR−ROOM,(PART1:THE EMPEROR,PART2:THE ROOM),
悲しげなフルートが印象的。これも戦争中の王の孤独感を表したもので、2部構成。フルートの響きが妙な悲しさを置いてゆく。。後半は、フリップの歪んだギターが聴ける。テーマを繰り返しながら、混沌と叙情を行き来する。
M4,LOST(PART1:THE DANCE IN SAND AND SEA,PART2:THE DANCE IN THE FROST),
こちらも2部構成。演奏とヴォーカルが絡みつくイントロ。これも混沌とした雲空から太陽の光が差し込むかのような美しいメロディがところどころ顔を出す。曲の展開も目まぐるしく変化する。
M5,PIONEERS OVER c.
内容が宇宙に飛び立った宇宙飛行士の遭難と言ったもので、イントロはなんと電子音。フリーキーなサックスが相変わらず鋭い主張を貫いている。(フリージャズをも破壊するぐらい)M4と同じようにこの曲も目まぐるしく展開が変わる。偶然の産物のように聞こえるこの曲の展開、構成力は素晴らしい。
各メンバーがわざとフリー・フォーム的な演奏をしているようにも思える。そこから起こる化学反応のような展開が実に緊張感に満ち溢れていて格好良い。 曲(詩)の内容は、孤独について書かれているものが多く重苦しい。しかし、これがハミルの世界である。
全体的にはアヴァンギャルド的思考が強く、実験精神も旺盛だ。VDGG初心者にはあまりお薦めできないが、避けては通れない作品。奥の深さもNO,1かも。大傑作。

 

PAWN HEARTS

HUGH BANTON -hammond E&C,farfisa professional organs,piano,mellotron,ARP synthesiser
bass
 pedals,bass guitar,psychedelic razor,vocals
GUY
 EVANS -drums,tympani,percussion,piano
PETER
 HAMMILL -lead vocals,acoustic & slide guitar,electric piano,piano
DAVID
 JACKSON -tenor,alto & soprano saxophones and devices,flute,vocals

ROBERT
 FRIPP -electric guitar
1971年発表の4th。最高傑作という呼び声の高いアルバム。実際、彼らの演奏も脂の乗り切った、頂点をも感じさせるものであり、ハミルもこの頃から人生を音楽に賭けようと志したようである。
前作に引き続き、ロバート・フリップがギター参加している。しかし、ニック・ポーターが完全に脱退し、ヒュー・バントンがオルガン・ベースを足で弾いている。 
前作もそうだったように、大作思考がもろに表れており、中でもM3,プラグ・オブ・ライトハウス・キーパーズは20分を超える大曲でVDGGを代表する名曲である。ハミルのヴォーカリゼーションはもちろんのこと、全てのメンバーが一体となって上り詰める神がかった境地。今作もジョン・アンソニーがプロデュース。ちなみに、ジャケットはハミルの1stを担当したポール・ホワイトヘッド。(ジェネシス『ナーサリー・クライム、フォックストロット』で有名)
M1,LEMMINGS (INCLUDING COG) 様々な表情を(声質を変えながら)ハミルは操りながら物語を彩ってゆく。渾然一体となった演奏が凄い迫力だ。静と動のコントラストがはっきりしており、VDGG全部の作品に言えることだが、緊迫感を伴ったコントラスト、またその切替えが見事だ。ハミルの演劇ぶりには脱帽。ピーター・ゲイブリエルにも負けない。
M2,MAN-ERG, 
何故かどの作品も2曲目がバラード。美しさも頂点にメッセージ性も高めながら、よりドラマティックに展開する。アヴァンギャルドな中間部を経て、サックスが美しく憂いを残しつつもソロを取る。再びハミルがバトンを握り力強さ、儚さ、脆さを含んだ圧倒的なウタが支配する。
M3,A PLAGUE OF LIGHTHOUSE KEEPERS,
 a.EYEWITNESS
 b.PICTURES/LIGHTHOUSE
 c.EYEWITNESS
 d.S.H.M.
 e.PRESENCE OF THE NIGHT
 f.KOSMOS TOURS
 g.(CUSTARD'S) LAST STAND
 h.THE CLOT THICKENS
 i.LAND'S END (SINELINE)
 j.WE GO NOW
10のパートからなる一大組曲。ハミルは様々な声を操り、序盤は絶えず緊張感を孕んでおり、いつ爆発してもいいような緊迫感に包まれる。静寂が支配し、サックスが切り裂かんばかりの警笛のような重い音を上げる。次は、チャーチ・オルガンが宗教的な空気を作り、再び序盤のテーマに回帰する。(c)。
物悲しさが漂い、サックスは音量も小さめに非常にリリカルなプレイをしている。しばらくして、一気にハミルのヴォーカルとともに盛り上がりを見せる。ここが一つ目の盛り上がりどころだろう。次第にピアノが脅迫的な混沌を生み出し、電子音とともに一気に場面が変わる。
ブレイクを挟み、非常に美しいバラードとなる。ドラマ性も頂点に達し、本当に泣きそうなくらいに美しい。そして、人格が入れ替わったかのような激しい演奏へ。ここにおいてメロトロンが使われているが、このメロトロンがまた叙情性とは正反対の狂気の沙汰とも言わんばかりの荒れ狂いようである。
一気に雲が晴れ、再び美しいバラードへ。弾き語りから、美しいサックスが絡み壮厳なコーラスとなり物語はクライマックスへ。コーラスがモザイク状となり喧騒的な終わりを迎える。
前期の総決算とでも言えるような内容である。彼らの持ちうるアイデアを詰め込んだ一大傑作。この後、彼らはツアーに出るが疲労を理由にバンド活動を停止。しかし、ハミルの創作意欲は衰えを知らずソロ活動に入る。(メンバーも全員参加しているが)歴史として見ることのできる現代だからこそ言えることだが、この作品は初期から続く前衛性、美しさ、ドラマ性、混沌、全てを消化しきった総決算的アルバム、区切りとして機能している。プログレッシヴ・ロックの真髄を味わえる傑作。必聴!

 

GOD BLUFF

GUY EVANS -drums,percussion
HUGH
 BANTON -keyboards,vocals,bass
PETER
 HAMMILL -lead vocals,guitars,piano
DAVID
 JACKSON -saxes,flute
1975年発表の5th。前作発表後のツアーでバンド活動を停止していたが、その後ハミルはソロ活動に専念していく。そして4年ぶりにVDGGが活動を再開することになる。
このゴッド・ブラフからの3枚はハミルのソロ的な色合いが濃く感じられるが、やはり活動停止中のハミルのソロ活動が多分に影響しているのだろう。今までにも増してハミルのヴォーカルがぐいぐいと引っ張っていき、大変ヘヴィな感覚を受ける。他のメンバーもハミルに(不本意かもしれないが)引き連られながら、見事な演奏(変拍子等を駆使し)を繰り広げている。そして、そのサウンドの一体感(ハミルの声は楽器でもある)からは、やはりハミルの専制政治からだけでは生まれ得なかったもので、ハミルを知り尽くした彼らの、いやVDGGの復活と言うにはあまりにもパワフルな一枚である。
M1,THE UNDERCOVER MAN,ハミルの声がまるで別人格のような装いを伴いつぶやく。序盤の美しさ、儚さを孕んだ高鳴りは実に見事だ。フルートの音色の格調高さもVDGGらしい。やはり、ハミルの声が物語りをリードし、ドラマティックに彩る。ハミルのヴォーカルをただ支えるようなオルガン音も魅力的。名曲なのだが何故BOXから外されているのでしょう。
M2,SCORCHED EARTH,
前曲と重なり合いフェード・インしてくる。ハミルのヴォーカルが全編に渡って強烈にアジり倒していく様は快感以外の何物でもない。演奏自体も変拍子をチマチマとやっていくのではなく、豪快にパワフルに、そしてスリリングに鳴り響く。
M3,ARROW,
ジャム・セッションがフェード・インし、何やら予感めいた悲哀感が支配したキーボードの音色で再び幕をあける。私にとってこの曲の衝撃度は凄いものがあった。何やらもの悲しげなのに、この狂気じみたハミルのヴォーカルに身動きがとれなくなった。とりあえず、ARROWの絶叫が凄すぎる。全く曲解説になっていないが、とりあえず傑作。
M4,THE SLEEPWALKERS,
こちらもARROWに負けないぐらいの傑作。サックスがリードし、ハミルのヴォーカルと絡み合う。変拍子の嵐で曲の展開もやや複雑。しかし、呆然とその展開をただただ聞くしかない。
何回も同じ事を書いて大変申し訳ないが、ハミルの声はデメトリオ・ストラトスに勝るとも劣らない強烈なインパクト、残像をリスナーに残す。そして、感動を味わえる。この盤に録音されたパワフルさ、ダイナミックさは、プログレ・リスナーだけでなく、一般のロック・ファンをも唸らせるものである。全曲と言っても4曲しかないが、いずれも名曲だ。絶対必聴!

 

STILL LIFE

GUY EVANS -drums,percussion
HUGH
 BANTON -organs,bass guitar,bass pedals,mellotron,piano
PETER
 HAMMILL -lead vocals,guitars,pianos
DAVID
 JACKSON -saxes,flute
1976年発表の6th。前作のアグレッシヴな面はやや奥に潜み、ハミルの内省的な一面が全面に溢れている。詩の方もますます哲学的な境地に乗り出しているようで、非常に繊細で、いかにも崩れてしまいそうなハミルの人格が見え隠れする。そして、それを優しく支えるのがメンバーの面々なのだろう。特にヒュー・バントンのオルガンは非常に素晴らしい。STILL LIFEとは『静物画』という意味で、ここでは非常にスローな時間が流れ大変心地良い。
ハミルが求める希望は、どこにあるのだろうか。ここで、その希求力は最大に、しかし絶望的に、その先の光を信じてやまないハミルはここで一端立ち止まり、さらに前へと進んでいく。そして、現在もその答えを探しているのだろう。こう言った求道的な思いは、ハミルだからこそ説得力がある。
M1,PILGRIMS,美しいファルセット・ヴォイスでオルガンと絡みながら、盛り上がり希望や不安を交錯させながら高鳴っていく。聴くものにとってこのハミルの声は非常に力強く、言葉にできない感動をもたらしてくれる。サックスの音色も涙を誘う。
M2,STILL LIFE,
深く、深く沈みこんでゆくハミルのヴォーカルにオルガンが静かに寄り添う。次第に、リズムが入りややアグレッシヴに展開してゆく。アグレッシヴな展開においてもどこか静かな時を感じる。時計の針を巻き戻すようにハミルはダークに神秘的にドラマティックに歌う。
M3,LA ROSSA,
オルガンがリードし、かなりアグレッシヴに展開する。跳ねるようなリズムが特徴的でハミルもアグレッシヴに歌う。しかし、今作の特徴でもあるソフトな部分をも時々演出する。
M4,MY ROOM(Waiting for Wonderland), 
非常に優しく、ソフトなサックスがリードする。ハミルも低音の声と高音を使い分けながら儚げに歌う。ワンダーランドを待つというタイトル通り、虚無感も感じる。しかし、全体的にはやはり優しい感触に包まれている。
M5,CHILDLIKE FAITH IN CHILDHOOD'S END,
フルートの格調高い音色とハミルが語りかけるように静かに序盤が始まる。アグレッシヴな展開を織り交ぜながら、向かう先はやはり希望だろうか。圧倒的な希求力とともに、必要充分な演奏とともに、動き出す。サックス・ソロは非常にドラマ性に富み秀逸だ。全ての感情を引き連れてクライマックスへ。圧倒的なドラマが支配する傑作。
私がVDGGに触れた最初の作品で、正直非常に思い入れが強いので何を書いてよいのか悩む。
無論、後期の傑作でVDGGの中でも本作が最も聴きやすいだろう。
感触としては2ndのREFUGEESのようなものもあるが、もっと決意めいたものを感じる。静と動のコントラスト、メロディ、全てが今まで以上。かつての混沌を美しさに変え、かつての前進から踏み止まり、より深淵な底が見える絶壁に立ち尽くした傑作。

 

WORLD RECORD

HUGH BANTON -manuals and pedals,manuel and his music of the pedallos
GUY EVANS -drums,percussion
PETER
 HAMMILL -vox,meurglys V and wassistderpunktenbacker
DAVID
 JACKSON -alto,tenor and soprano saxophones and accoutrements,and fluteall in the Grotto
1976年発表の7th。活動再開後、僅か2年近くで3枚もの傑作を送り出している彼等の力量には脱帽する。この3枚の間に恐らく創造力がピークに達していたのだろう。
前作の空気から一転し、再び彼等が歩み出した記録でもある。ゴッド・ブラフの動の面、スティル・ライフの静の面が合さったような感触も若干受ける。しかし、これまでにはなかったような展開が多く、ユーモアを含んだ演奏も面白い。これはやはり新境地だろう。(最終曲WONDERINGが異色とも思えるぐらいに) この後、ヒュー・バントンが脱退する。つまり、黄金期のメンバーで作られた最終作でもあり、そう言った意味で最終曲のWONDERINGは非常に感慨深いものがある。
M1,WHEN SHE COMES,力が抜けたようなジャム・セッションがモザイク状から曲になってゆく。ユーモア溢れるジャズ調の演奏で、ファンク色も充分。VDGGにしては明るい印象を受ける。デイヴィッド・ジャクソンのサックス・ソロが秀逸。
M2,A PLACE TO SURVIVE,
奇妙な空間がその先に待ち受けているかのような妙なスリル感を味わえる。しかし重苦しいものではなく、実に軽快で、ハミルのヴォーカルも吐き出すようにガナる。インストにおいても非常にアグレッシヴかつ軽快。しかし、何故か喉につっかかえたような不快感、焦燥感があり面白い。
M3,MASKS,
一気に空気が変わるように、優しいサックスがメロディアスにうたう。中盤、若干アグレッシヴにこれまでの曲と似たような妙に軽快で跳ねたようなサウンドへ。何やら演奏自体が崩壊しているような危うさを伴い、シンフォニックに展開。最後は序盤の落ち着いたテーマ(?)部分へ。ハミルの声も一筋縄ではいかない。
M4,MEURGLYS V(THE SONGWRITER'S GUILD),
奇怪なイントロから、テーマへ。アンサンブルが世話しなく万華鏡のように変化し飽きさせない。ジャズ調の展開からレゲエのリズムまで取り込んだ非常に幅広い楽曲だ。アヴァンギャルドな展開を多々含んだ20分の大作。ハミルのギターがなかなか格好良い。
M5,WONDERING,
待ってました、と言わんばかりのVDGGらしいバラード。そして、ハミルらしい曲だ。もはや、何の説明もいらないだろう。ただただ、身を委ねるのみ、だ。ハミルは何かを悟ったかのようにここでは迷いがない。VDGGの代表曲。
雑感として、前作のSTILL LIFEとは程遠い。最終曲を除けば、そのほとんどがユーモア感覚溢れる今までのVDGGより一歩も二歩も進んだ内容だ。(ダークな印象もほとんど受けない。)恐らく、これらの4曲のみでリリースされていたら評価もまた違っていたように思える。そして、最終曲WONDERINGで彼等は希望を掴んだのだろうか。非常に力強く、歌詞も未来系が多い。これまでの軌跡を考えると涙を流しそうになる。最初に聴くにはお薦めしないアルバムだが、とりあえずは必聴。

 

 

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