10: BEN WATT / NORTH MARINE DRIVE

EVERYTHING BUT THE GIRLは聴いたことはない。ロバート・ワイアットが参加している云々も買ってから気付いた。何故これを買ったのかは思い出せないが、多分誰かに薦められたからだと思う。
基本的にプログレは秋、冬シーズンを主に聴きたい欲求が起こる。(夏にも聴くが・・・)実を言えば、あまりシーズンに固執したアルバムは好きではない。(プログレはピンからキリまでなので一概には言えないが)

その点、このアルバムは違う。最初はもちろん夏のイメージがあったが(ジャケットを見る限り冬?)、聴くうちに季節には関係ない普遍性も備えている事が分かり、大愛聴盤になる。

やや寂しげなベン・ワットのヴォーカルはもちろん、静謐としたアコースティック・ギターも言葉がない。ボサノヴァやジャズ、その他ロック、ポップをジャンル関係なく消化し、優しく語り掛けてくる。ここだけの時間がゆっくりと脅迫せずに流れる。

昨今の時間に押し潰されたようなライフ・スタイルをほんの少し、自分の時間に変えてみることも良い気分転換になる。スロー・ライフだなんて言葉も今では流行っているが、スローライフなんて結局は他者と自分との区別に基づくものだ。

このアルバムは、80年代のMTV系、ニューウェイヴ系ジャンルとは全くの無縁。ネオアコという言葉も馬鹿馬鹿しい。

 

9: THELONIOUS MONK / THELONIOUS HIMSELF

このアルバムを聴くきっかけとなったのは、もちろんマイルス・デイヴィスのラウンド・ミッドナイトの原曲を聴きたくなったからという理由による。
マイルスのラウンド〜があまりにもキャッチーに聴こえ、ジャズ初心者の私にとっては『なんて格好良いトランペットだ』とえらく感動したのを覚えている。しかも、レコードだったので感動は2倍増し。

で、このモンクのヒムセルフを聴いたのだが、最初聴いた感想は、アレっ?と肩透かしを喰らった感じになったのだった。メロディを重視するのではなく、音と音との間、空間に重きを置き、特異なメロディが進行する。
ムード的なオシャレ要素は個人的に皆無だと思う。

何回聴いても不思議さは残り、どこか釈然としないまま、取り憑かれたかのようにもう一度再生ボタンを押す。そんな音楽だ。

まだ、私はモンクの素晴らしさは、何ひとつ分かっていないだろう。メロディの美しさではなく、モンク独特のタイム感覚。すなわち、タッチとタッチの間。
この間には、きっと私の知らないモンクの魅力がまだまだ詰まっているに違いない。

 

8: MILES DAVIS / SKETCHES OF SPAIN

知らない人はいないであろう大名盤、『KIND OF BLUE』の後に発表された、ギル・エヴァンスとのコラボ、スケッチィズ・オブ・スペイン。

クールの誕生から、ギルとの共同作業が始まったが、私はこれが一番好き。ある意味、ジャズではないのかもしれないが、そんなことはどうでもいい。
カインド・オブ・ブルーでも西班牙音楽を取り入れたマイルスが、今アルバムでは西班牙色は勿論のこと、民族色を取り入れ、クラシック的な響きも覗わせるアルバムでもある。
細かい技法、ミュート等は私にはあまりよく分からないが、このアルバムでの優れた映像性には、正直驚いた。寒い表現で申し訳ないが、荒涼とした大地、とてつもなく悲しい映像を想起する。終焉の世界のような・・・

マイルスはそういったものより、技巧的なものを重視するような人だったろうから、そういった事は、単に私一人だけ思っているような事だと思う。というより、作品が一人立ちしているからには、一人一人の思いが存在するはずだ。

しかし、これってプログレ・ファンに受けそうだな〜。決して、オシャレなジャズ・バーではかからない。カインド・オブ・ブルーとの違い。(でも、カインド・オブ・ブルーがかかるバーもあんまりないと思うけど)

 

7: RAIN TREE CROW / same

最近は、もう梅雨になったのかと思うほど雨ばっかですね。しかし、私自身別に雨は嫌いというわけじゃない。出かけなければならない時の雨は確かに鬱陶しいが、家の中から眺める雨の風景だったり、雨の音は何故か心地よいし好きだ。

雨の音楽とは全く関係ないと思うが、バンド名(タイトル名)にRAINとついているので(笑)。
RAIN TREE CROWは、JAPANのメンバーが再び集まった再結成盤と考えられている。ジャパンの音楽はあまり詳しくないのだが、デヴィッド・シルヴィアンや、このRAIN TREE CROWのデカダンな雰囲気と、感情を表に出すことのないこのアルバムは大好きだ。

そしていつの間にやら私の中で、静かな雨が永遠に降り続ける風景というものを想起するアルバムになってしまった。映像的な音というのは素晴らしいと思う。

よくドラマや小説、音楽の歌詞等に使われる表現で、『止まない雨はない』だの、『朝の来ない夜はない』とかあるが(今時こんな事言う奴いないと思うが)、止まない雨や朝の来ない夜の方が素晴らしいと思うのは私だけだろうか・・・?

 

6: NEIL YOUNG / AFTER THE GOLD RUSH

普段あまりニール・ヤングを聴くことは多くないが、何かに疲れたりした時は、ハーヴェストやこれを狂ったように聴く。
このアルバムは、ニール・ヤングのアクースティックな面の最高傑作と謳われている通り、叙情性に富んだ涙無くして聴けないアルバムだろう。
世の喧騒とは別の、心の隙間に入りこんでくるアルバム。タイトル通り祭りの終わった後の寂寥感が、実に心地よい。

ニール・ヤングの繊細な声は、何かを語りかけてくるようで、そしてその脅迫しない歌声はやはり癒しのようなものもあるのだろう。例えるなら秋の夜長の虫の声みたいなものかも。
鬱月間(5月)ということもあり、午後のやるせない気持ちの時はこれを聴きます。

音楽に癒されるってことは、誰もが経験あると思うが、音楽って自分にとって重要だなと思える人は今の世の中そんなにいないように思える。特に日本のような文化水準の低い国は、音楽は商売のための商品という認識でしかなく、アーティストもそんな人間は多いと思う。少なくとも本当に音楽が好きな人はそう感じていると思う。

最近、洋楽輸入盤の輸入禁止問題が話題になっているが、これがそのいい例だ。私は、もちろん法案に反対だが、もう音楽業界なんか潰れてもいいと思っている。
無責任かもしれないが、この法案が通ればそんな日も近くなると思う。それならそれで、良いかもしれない。
最近弱気です。

 

5: ZIOR / same

エアメイル・レコーディングからラリー・ペイジ・コレクション第2段が先日発売された。
前回のラインナップといい、今回もブリティッシュ・ロックファンには涙ものの発売だろう。
私は特に、この
ZIOR(ザイオール)の発売は嬉しくてしょうがなかった。

英国アンダーグラウンド・シーンを一望するようなヘヴィでどんよりとしたサウンドにアンダーグラウンドでプログレッシヴなアートのキーフによるジャケット。
特にジャケットは個人的にはキーフの中でも1,2を争うぐらいに好きな一枚だ。ブラック・サバスの1st黒い安息日のアートと似ている点が多い。
違う世界のような不思議なジャケットである。是非その手にとって見て欲しいです。

それにしても、このエアメイル・レコーディングという会社は凄い。こんなマニアックなアーティストばかり出して売れるのだろうか!?と誰しも思うとこだろう。オリジナル・レコードは云万円等のアルバムばかりで、紙ジャケの作りも非常に良い。値段はやや高めだが、このラインナップやジャケットの作りを見ていると納得してしまう。商売というより、好きで出しているような印象を受ける。

これからも是非素晴らしい未だ見ぬアーティストの復刻リイシューを望む。今回は会社の宣伝ですね。

 

4: MAYO THOMPSON / CORKY'S DEBT HIS FATHER

サイケ好きから言わせれば、知らない人はいないであろう、レッド・クレイオラのリーダー、メイヨ・トンプソンの唯一のソロ作。

私は、サイケは好きなのだがあまり詳しくなく、偉そうに言えないのだが、このメイヨ・トンプソンのアルバムは、サイケ初心者にお薦めできる作品だと思う。
レッド・クレイオラは、どちらかと言えば前衛色が強いのでメイヨ・トンプソンや、イギリスならシド・バレットを聴くのがとっつき易いかもしれない。

曲調はあくまで、ポップなのだがメイヨ・トンプソンのヘロヘロヴォーカルがやたら独自路線(笑)で、こっちまでヘロヘロになる。そして、いかにもこの時代の録音だと分かるような音質の空気感も気持ち良い。

時々嘘のようにうまい歌が聞こえてきて、その歌がまた切なくて素晴らしい。

何をもってサイケと呼ぶのかは、個人個人に差はあるが、万人が認めるサイケデリック・ロックの大名盤である。

 

3: OSCAR PRUDENTE / INFINITE FORTUNE

SORRY,LOST IMAGE

イタリアン・プログレ。昨年のイタリアBMGの紙ジャケ化の時に手に入れたのだが、かなり、マニアックなB級めいた音が流れてくるのかと思いきや、内容はギターロック。
プログレッシヴ・ロックに入るのかどうかもわからない。しゃがれたフルートのイントロが始まると、ピアノが重なり、もう後には引けない。甘いロックかと思いきや、その音はかなり格好良くストレートだ。

思わず口ずさみそうなメロディもいいが、実はヴォーカルはかなりクール。光に向けて走り出しているような音だ。かなりの好盤です。

周知の通り、イタリアBMGにはまだまだ素晴らしい作品が眠っているので、これを機会にどんどん再発していって欲しい。

 

2: JOHN & BEVERLEY MARTYN / STORMBRINGER

今週の一枚ということで、まだ聴き込みもかなり浅いCDを取り上げることにします。

それにしても、先入観というのは厄介だ。例えばこのアルバム、ジャケットを見てほしい。男女二人が草原に座って手を繋ぎ、女性は空を見上げる。空色は怪しい。
私は、世界には二人しかおらず、終焉を迎える等と飛躍しすぎた思いで、このアルバムを眺めておりました。

で、流れてくる音楽も悲壮感漂う世界が終わる歌のような感じかと思っていたのだが、ここから流れてくるのは、良質なフォーク・ポップ・ロック。

とても世界は終わりません。

歌詞がわからないので、なんとも言えないのだが。誰かこのアルバムに詳しい方、教えて下さい。先入観というのは、とてもやっかいですね。でもはっきり言ってこのアルバム良いです。優しさに包まれております。ジャケットも美しい。

是非紙ジャケットで手にしたいアルバム。

 

1: ALBERT AYLER / SPIRITUAL UNITY

私は、もちろんロック→プログレといった経緯でジャズの道に入ったため、自然とフリー・ジャズや、フュージョンが耳に馴染み、いわゆるモダン・ジャズよりかは、こちらが自然であった。(現在は、モダン・ジャズばかり聴いているが)

アルバート・アイラーのこのアルバムは大学の友達に借りて聞いたのが最初で、その後大変気に入り、自分でも買った次第である。

アルバート・アイラーは、当初ヨーロッパで活動していたため、アメリカでのデビュー盤がこれとなる。(ちなみに、アメリカでは当初酷評されていた。)フリーとなると、ジョン・コルトレーン、ファラオ・サンダース、サン・ラーと並ぶ巨匠となる。そして、コルトレーンは当初彼の吹くサックスを聴き、『俺もこういう風に吹きたかった』と言ったという。

アルバート・アイラーは多分にコルトレーンより自由だった。コルトレーンは何もかも計算であるかのような演奏をこなしたが(それがインプロであっても)アイラーはまさしく、コルトレーンにとってはジャズという呪縛から逃れた自由人だったのだろう。

アイラー関連の話になると、魂だの神とか崇高な話になりがちだけれど、なんとなーく分かる気もする。三島由紀夫と同じ日に謎の死を迎えたとか逸話も多く、結構不思議な存在だ。

話を戻して、このアルバム。アイラーの中では聞きやすく、ジャズ初心者にも入りやすいと思う。ただ、モダン・ジャズを期待するならアイラーはやめた方が良いと思う。

 

 

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