SOFT MACHINE

1966年にワイルド・フラワーズを母体とし結成。(兄弟バンドとしてCARAVAN) 周知の通り、カンタベリー・ロックの頂点に君臨し続け、今尚、カンタベリーと言えばソフツと言えるぐらい影響力のあるバンドである。
メンバーもかなり変わり続け、カンタベリー・トゥリーを築く上での本流でもある。当時のイギリスのロック・バンドがジャズと関った濃密な歴史を、ソフツを聴いて一望できると言っても過言ではない。メンバー遍歴は面倒なので、アルバム毎のメンバーを参考にされたし。

簡単に遍歴を。旧知の仲であったラトリッジ、ホッパー、ケヴィンがワイアットの下宿マンションに訪れ、ジャズのレコードを聴いていたのがその始まりである。そこに、デイヴィッド・アレンが加わり、ビートニクにも興味があった彼等はウィリアム・バロウズの小説よりSOFT MACHINEという名をとり活動して行くことになる。以後は各アルバム欄を参考に。

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ソフツは、先述の通り、時期によってメンバーが全然違うグループでもあり、とりあえず超名盤でもあるTHIRDから入るのをお薦めしたい。(本当は1stから順に聴くのが一番だろうけど)初期は、サイケとポップスが絶妙に絡み合った時期でTWOは今尚絶大な支持を得ている。そして、サイケの余波も感じさせ、さらにプログレッシヴなアプローチが目立つのがTHIRDであり、その後FOURTHからはジャズ・ロック路線、ミニマルなアプローチが目立ったフュージョン路線と分かれる。(かなり大雑把だが)どの時期も当たり外れはないのだが、個人の嗜好に合わせて聴くのが良いかと。

(祝)紙ジャケ化!というより、リマスター!
ちなみに、10月6日(2004年)には、ソフツの紙ジャケがソニーさんよりリリースされます。1890円という低価格で、3rdから7thまで。(1st、2ndの権利は今何処に?BUNDLESはEMIのはず。)特にソフツは音質がかなり悪かったので、リマスタリングでどこまで改善されるのかが、楽しみでしょうがないです。また購入後、当ページでご報告します。

 

VOLUME ONE

ROBERT WYATT -vocals,drums
KEVIN
 AYERS -bass guitar,vocals
MIKE
 RATLEDGE -keyboards
GUEST
HUGH HOPPER -bass on 13
1968年(12月)リリースの1stアルバム。録音前にギタリスト、デヴィッド・アレンがドラッグ問題によりイギリスを追われ脱退する。(その後フランスへ渡りGONG結成へ)そしてアレンのユートピア的思想を引き受けつつ、トリオ編成になって録音される。
ここで聞かれるのは、ジャズ・ロックと言うより、ポップ・ソング集である。しかし、普通のポップと言い切れない変態性をも有し、この時代ならではのサイケデリックな一枚である。様々な音楽性が入り混じり、キャッチーに歌われる。ダダ臭も充分!実に甘く切ないソフト・マシーンの始まりである。
M1,HOPE FOR HAPPINESS,切ないいつ途切れてもおかしくないような緊張感を持ったワイアットのスキャットから始まる代表曲。静寂から喧騒へ、騒がしいドラミング、疾走するキーボード。中盤のインプロ(?)はいつ聞いても格好良い。
M2,JOY OF A TOY,
 先ほどまでの景色が歪んでゆくような不思議な感触を受ける。いかにもサイケなメロディが印象的だが、いつの間にか置いてけぼりにされたかのように、スピードを上げていく。
M3,HOPE FOR HAPPINESS(reprise),
そして再びM1のリプライズへ。短いながら、歪みが強烈。
M4,WHY AM I SO SHORT?,
目まぐるしく展開が変わるが、基本はロック。ラトリッジの疾走感のあるキーボード・プレイは本当に凄い。
M5,SO BOOT IF AT ALL,
ワイアットとラトリッジのバトルのようなインプロが凄い。やっぱり根底にはジャズがあるのね、と思わせるプレイの連続。
M6,A CERTAIN KIND,
ホッパー作。それにしても、ワイアットの声の素晴らしさは筆舌し難い。この切なく胸を締め付ける声、ラトリッジのオルガン。1stだけにある世界である。
M7,SAVE YOURSELF,
ワイアット作。一転してスピード感のあるナンバーへ。眩暈を起こさせるようなラトリッジのキーボード、ファズ・ベースが絡む。
M8,PRISCILLA,
組曲のようになっていて前曲との移り変わりがさっぱりわからない。ラトリッジのキーボードが心地良い。
M9,LULLABYE,
さらに続く。ワイアットの忙しないドラミングがなんとも言えない。曲もハードに駆け上がって行く。
M10,WE DID IT AGAIN,
ほとんど曲間がなく、続く。息苦しさまでも心地良くなってきそうなリズムが永遠かの如く続く。
M11,PLUS BELLE QU'UNE POUBELLE,(塵箱より美しく)
再び曲間はなく、重く気だるいベース音から始まる。悪夢のようなキーボードが絡みながらM12へ。
M12,WHY ARE WE SLEEPING?,
モザイクのようになって一瞬で当曲に移る。ケヴィンもソロでカヴァーしていたりと結構有名曲でもあるだろう。ケヴィンの低く重たいポエトリーと夢見心地なコーラス。
M13,BOX 25/4 LID,
夢の終わりを告げるような不思議なエンディング。
静と動がモザイク状となり入り混じりながら、まるで悪夢と幸福な夢、両方同時に見ているかのような不思議な気持ちにさせられる。曲間がほとんどないために本当に夢の中という感じだ。(ライブでブーイングを聞かないようにと曲間を無くしたらしい?)
ユーモア充分、捻くれ度合いも充分。ジャズの要素とロックの疾走感が丁度良い具合に混ざり、そこにワイアットの至福のヴォーカルが乗る。これ以上のものがあるか、と言わんばかりの至福の一枚である。アヴァン・ポップの傑作。ちなみに、ジャケは超変形ジャケ。(現在は2ndとの2in1)必聴です。

 

VOLUME TWO

ROBERT WYATT -vocals,drums
MIKE
 RATLEDGE -keyboards
HUGH
 HOPPER -bass
GUEST
BRIAN HOPPER -sax,flute
1969年4月発表の2nd。
前作発表に伴うアメリカ・ツアーにおいて彼等は疲労を理由に解散する。しかし、前作はアメリカ等で好評を持って受け入れられ、アメリカのレコード会社(プローブ)は、彼等に次作を作るようアプローチする。
ワイアットを中心に再結成の話が進んでいたが、ケヴィン・エアーズはガールフレンドとともにスペインのイビザ島に移住(かなりの放浪癖とボヘミアン気質による)。彼等は、ツアー・マネージャー、ワイルド・フラワーズのメンバーでもあったヒュー・ホッパーをベーシストとして迎え、このアルバムの制作に取り掛かった。

このアルバムは、2つの組曲形式から成っていて、ほとんどがメドレー形式である。またヒュー・ホッパーの加入により、1stよりさらにジャズ色を濃くし、それでいてダダ的ユーモア溢れる唯一無二のアルバムとなっている。今作が一番好きという人もかなり多いのではないでしょうか?

RIVMIC MELODIES
M1,PATAPHYSICAL INTRODUCTION-PT 1,
M2,A CONCISE BRITISH ALPHABET-PT 1,
M3,HIBOU, ANEMONE AND BEAR,
M4,A CONCISE BRITISH ALPHABET-PT 2,
M5,HULLODER,
M6,DADA WAS HERE,
M7,THANK YOU PIERROT LUNAIRE,
M8,HAVE YOU EVER BEAN GREEN?,
M9,PATAPHYSICAL INTRODUCTION-PT 2,
M10,OUT OF TUNES,
ESTHER'S NOSE JOB
M11,AS LONG AS HE LIES PERFECTLY STILL,
M12,DEDICATED TO YOU BUT YOU WEREN'T LISTENING,
M13,FIRE ENGINE PASSING WITH BELLS CLANGING,
M14,PIG,
M15,ORANGE SKIN FOOD,
M16,A DOOR OPENS AND CLOSES,
M17,10.30 RETURNS TO THE BEDROOM,
非常に目まぐるしく展開が変わって行き、眩暈を起こさせるようなスピード感溢れるアルバムである。それでいて、先述した通り、ダダ的なユーモア感覚が蔓延しており、英国らしい皮肉も効いた彼らの面白みが如何なく発揮されたアルバムではないだろうか?(この後やたらと知的に真面目に変化して行くことを考えると余計に)それはやっぱり、アレンやケヴィンのいたマシーンをワイアットが受け継いでいるからだろう。

なんだか、まとまりがなく、無理やり繋げているとも思えなくはないが、それも黙認させてしまうかのような出来である。とりあえず、アッという間に終わる。
ヒュー・ホッパーの実兄のブライアン・ホッパーによるサックスも実に効果的に挿入されている。ワイアットのヴォーカルは勿論のこと、華やかなドラミングも良い。THIRDは実に理知的に計算された記憶の回廊を辿っていくが、こちらはまるで本当に夢のようなアヤフヤさをもって一気に聞かせる。曲という概念が不明確なので順番に聴くしかない。(1stとのカップリングは止めて欲しい)
とりあえず、筆舌に尽くしがたい魅力を放出しまくっている。そして、その魅力を追えなくさせるような構成で、もう一度同じ夢を見るかの如く、リピートしてしまう、そんな一枚だ。

 

THIRD

MIKE RATLEDGE -organ and piano
HUGH
 HOPPER -bass guitar
ROBERT
 WYATT -drums and vocal
ELTON
 DEAN -alto sax and saxello
GUEST
RAD
 SPALL -violin
LYN
 DOBSON -flute and soprano sax
NICK
 EVANS -trombone
JIMMY
 HASTINGS -flute and bass clarinet
1970年6月発表の3rd。(LPは片面に1曲づつという2枚組み)
2nd発表後、彼等はキース・ティペット・グループ等、英国のジャズ・メンと深く関るようになり、英国ツアーを行う。その英国ツアーを契機に、キース・ティペット・グループからエルトン・ディーンが正式にメンバーに加わる。またその他ニック・エヴァンスを始めとして多くのメンバーがゲストとして参加している。(ホーン・セクションの拡大、よりジャズ色を濃くする)

そして、彼等はより高度なテクニックを有し、現代音楽、ジャズ、フリージャズを学びながらこの大傑作THIRDを発表する。2nd以前とは大分音楽性を変えているが、2ndまでのサイケデリックな感覚も受け継いだ彼等の集大成でもある。
サウンドは一言で、ジャズ・ロックとは言い切れないもので、ユーモア感覚もあり、現代音楽的なアプローチも有し、テープの逆回転や、ファズ等を多用した実験精神溢れる、それでいて夢見がちなサウンドだ。またM3,MOON IN JUNEはマシーンにおけるワイアットの最後の歌唱である。何処かしら、先鋭的なサウンドを目指していくマシーンを予見しているかのような寂しげなヴォーカルが目を惹く。後にも先にもない名演である。
(ちなみに、勿論ギターは使っていないです。ギターのように聞こえる音はファズをかけまくったベースやオルガンだと思われます)

M1,FACELIFT,
彼等の代表曲。モザイク状のオルガンによるインプロがオープニングを奏で、非常にノイジーなブラス、(キーボードかも)に覆われる(民族音楽っぽい展開も)。5分過ぎにようやくテーマ部分の演奏が聞こえる。ブラスを中心としたユニゾンがノイズに揉まれながら激しく展開して行く。中盤何やら機械的なリズムが入り込んでくる妙な仕掛けも。
混沌さが常にあり、それでいてパワフルなサックス等によるインタープレイが心地良く、展開もまさしくプログレと言いたくなるような名曲だ。このスタジオ盤は編集による異化作用が働いている。ライブ版もどうぞ。
M2,SLIGHTLY ALL THE TIME,
奇妙なベースが変拍子を刻み、テーマ部分のサックスが入る。メロディアスな演奏を支えているのが、ワイアットのハイハットの使い方だろう。ラトリッジの主張しないエレピも心地良い。次第にスピードを上げ疾走する。リリカルなフルートの音色が印象的だ。再びリズムが変わり、サックスがソロ。(エレピがドラマを作っている様)しばらく続いた後、再びリズムが変わり、サックスが静かに哀愁的ですらあるソロを取る。(オルガンは幻惑的な響きに変わる)リズムを上げ、妙な喧騒感のある不思議な部分へ。それでもサックスが主導でソロをとるが、なんだか慌ただしい様を残したまま混沌的なアンサンブルへ。
M3,MOON IN JUNE,
(6月の月)
なんと言っても、マシーンにおけるワイアット最後のヴォーカル曲。それだけでも感慨深いものがあるが、曲の出来だけ見ても申し分ない大名曲である。儚げもあるワイアットのヴォーカルが妙なグルーヴを生み、メロディーをなぞるアンサンブル。落ち着きがなく、それでいて浮遊感もあり、幸福である。浪漫溢れる名曲だ。ちなみに、オルタネイト・テイクもBBCライブに収録されていて、こちらよりロック色もあり聴きやすい。
M4,OUT-BLOODY-RAGEOUS,
テープの逆回転を配したオープニングから明確な輪郭を捉えたテーマ部分へ。非常にスリル溢れるインタープレイだ。ヒューホッパーのベースが心地良いグルーヴ感を生む。サックスのユニゾンが入ったと思いきや、急にモザイク状に場面が変わる。サイケっぽい不思議なオルガンをバックに憂いを帯びたサックス・ソロへ。次第にユニゾンとなり、混沌とした様相を呈す。
展開の妙とも言えそうな不思議な曲だ。何処かしら違う場所へ連れていってくれる危ない曲である。
それにしても、不思議な盤だ。何度も何度も聴き返すにつれ、新たな一面が顔を出す。それ故に、中毒性もあり、単に1回聴いて『ジャズ・ロック』だと決め付ければ非常に損をするだろう。
常に、夢を見ているかのような、淡い感覚、記憶が次々と消えていくような感覚がある。(ちなみにラトリッジのスリル溢れるオルガン・プレイ、インタープレイもこの盤が最高だと思う。)

サウンドを追いかけるごとに、輪郭が崩れ、次第に別の新たな顔を出し、そこから更に奥深く、またはミニマルにと言うように不思議な感触を残しながら展開して行く。数回聴いて投げ出した人は、さらに数回聴いてみて欲しい。彼等の想像力がぶつかり合った未だに魅力を語り尽くせない最高傑作である。

 

 

 

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