ROBERT WYATT

1945年1月28日、イングランドの南西部に位置するブリストルにて生を受ける。
ROBERT WYATT−本名、ロバート・ワイアット・エリッジ。
両親(父親ジョージ・エリッジは心理学者、母親オナーはジャーナリスト)の影響でモダン・ジャズ、ビートニクを親しむ少年であったそうな。カンタベリーのある学校にて美術を専攻。
彼の下宿先にオーストラリア生まれのデイヴィッド・アレンが現れ、彼に大きく影響を与え、バンドを結成。そのバンドが次第にソフト・マシーンと名乗り、活動を続けて行く。(以後は略します。すみません。)

ソフト・マシーンの歌うドラマーだったワイアットは、カンタベリー・シーンの中でも特に重要なアーティストである。
逆に言えば、ワイアットの音楽を聴くと、カンタベリーというジャンルは全く重要ではない事もわかる。
1973年不慮の事故により、下半身付随となり、その後車椅子生活を余儀なくされ、ドラマー生命を絶たれるが、ロック・ボトムでシンガーとして新たにスタートする。
彼の作品には様々な風刺も込められており、彼は社会運動家でもあった。(英共産党にも一時期在籍)

もちろん、彼の素晴らしいところは全く押し付けがましくなく、静かにゆっくりと訴えかけるところにある。ビートニクにも影響を受けた彼のユーモアラスな詩も必読。

彼のソロ・アルバムを年代順に並べておくので参考に。(その他にもマッチング・モウル結成や、他アーティスト作品にも数多く参加しているがここでは除外します。気が向いたらUPします。)

1970年 『The End Of An Ear』 発表(ソニー・コロンビアより)
1974年 『ROCK BOTTOM』 発表(VIRGIN)
1975年 『RUTH IS STRANGER THAN RICHARD』 発表
1982年 『NOTHING CAN STOP US』 発表(ラフトレード移籍後初アルバム)
1985年 『OLD ROTTENHAT』 発表
1991年 『DONDESTAN』 発表
1997年 『SHLEEP』 発表(HANNIBAL)
2003年 『CUCKOOLAND』 発表

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この人の音楽を聴くと、世の中が定義する幸福はどうでも良くなり、またはその個人と世俗の間にある空虚感を独特の幸福感で埋めてくれます。

最高のシンガーでしょう。何も言うことはありません。
どのアルバムを手にとっても、リスナーにとって心地良い空間を作り出してくれるアーティストです。
ただ、1stだけは彼の実験精神、前衛性が出たアルバムで質感は全然違います。(このアルバムも素晴らしいです)

彼はソロ以外にも活動の範囲が広く、様々なアーティストとコラボしているため、彼の歌声は色々なアルバムで聴けます。是非とも未聴の方は聴いてみて下さい。

 

HIS GREATEST MISSES

M1,P.L.A. オールド・ロッテンハット収録。
M2,WORSHIP, 
ドンデスタン収録。
M3,HEAPS OF SHEEPS,  
シュリープ収録。
M4,FREE WILL AND TESTAMENT,  
シュリープ収録。
M5,I'M A BELIEVER -extended version  
1974年9月発表されたシングル。モンキーズのカヴァー。ボックスセットEPS収録。
M6,SEA SONG,  
ロック・ボトム収録。
M7,LITTLE RED ROBIN HOOD HIT THE ROAD,  
ロック・ボトム収録。
M8,SOLAR FLARES,  
ルース・イズ・ストレンジャー・ザン・リチャード収録。
M9,AT LAST I AM FREE,  
ナッシング・キャン・ストップ・アス収録。
M10,ARAUCO,  
ナッシング・キャン・ストップ・アス収録。
M11,THE AGE OF SELF,  
オールド・ロッテンハット収録。
M12,ALIEN,  
シュリープ収録。
M13,SHIPBUILDING -remastard in 1998,  
エルヴィス・コステロ作曲。82年8月発表のシングル。ボックスセットEPS収録。
M14,MEMORIES OF YOU,  
シップビルディングのカップリング曲。ボックスセットEPS収録。
M15,MUDDY MOUSE (b)  
ルース・イズ・ストレンジャー・ザン・リチャード収録。
M16,MISTER E,  
クックーランド収録。
M17,FOREIGN ACCENTS,  
クックーランド収録。
2004年9月発表。ヒズ・グレイテスト・ミッシーズ〜ロバート・ワイアットの30年の軌跡
日本独自企画編集版。選曲はストレンジ・デイズ(ロック・ボトム〜最新作クックーランドより)。初回生産限定紙ジャケット仕様(プラケ販売は無し)。アルバム・ジャケットはワイアットが6歳(!)の時に書いたもの。

日本独自企画なのだが、何が嬉しいかって、入手困難だったシングル『I'm A Believer』(モンキーズのカヴァー)と、『SHIPBUILDING』(エルヴィス・コステロ作曲、クライヴ・ランガー作詞の曲をワイアットが歌うという企画)等3曲のアルバム未収録曲がこの編集版に収められている点(EPSというボックス・セットにも収録されているが現在廃盤)。ただ、それらのシングルも持っているという人は買わない方が良い。

この人が長年に渡って尊敬されてきたのが分かる編集版だ。彼の曲は、例えスピードがあっても実に穏やかである。発表された年代こそ違えど全ての曲がまるで違和感がない。彼の歌声の静かな力強さを再度認識させられた。と同時に、やっぱり感動しないわけがない。最高に素敵なシンガーだ。いつまでも、新作を待っていたくなる。

1曲でも持っていない曲があるならば、迷わず買いだ(限定版なので無くなる前に)。ワイアットをこれから聴こうって人にもお薦め。(気に入ったら全てのアルバムを買うことになるが。)

 

 

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The End Of An Ear

ソフト・マシーン在籍中に作られた1stソロ・アルバム。
ここでは、彼の音楽に対する思いが屈折して表現されている。
音楽をさらに作り直すと言った試みだ。様々なテープ操作、彼の声までもがリズムになり、
彼のドラムも真面目なリズムは一つもなく、どことなく断片でしかない
映像が常に切り替わる。この不安定なリズムがいつ終わるのか不安に
なると同時に、美しいピアノが鳴り急に大空が開けるような思いになる。
しかし、それも束の間の休息であるかのように、場面場面が忙しなく、
常に実験であるかのように繰り返される。この前衛性は後にも先にもこれだけ
だろう。ジャズ・ロックという枠には決して当てはめられない。
(ギル・エヴァンスのカヴァー以外は、全てオリジナル)


ROCK BOTTOM

74年発表の大傑作2nd。1stは、実験めいた前衛精神溢れる作品だったのに対し、
マッチング・モウルを通過した後発表された今作は必殺の歌ものレコード。
歌ものとは言っても、相変わらず前衛的な部分は多々見られるが。
それにしても、素晴らしい歌声だ。何処か空から降ってくるような
優しいスキャット。

アルバムは必殺の#1、SeaSongから始まる。ソフト・マシーン初期の
デヴィッド・アレン、ケヴィン・エアーズのユニーク精神を受け継いだのは
やはりワイアットだ。このサイケデリックな感覚もワイアット唯一のものだし。
そして何よりドラマーのリズム感性が声に響き、聴く者は心地よい揺れを
感じることができる。
下半身付随という悲劇的な事故を乗り越え、友人の力と共に
作り上げた傑作。(本作は72年頃から作られてはいたが。)
そう言った付加的なエピソード除いても感動せずにはいられない。
本作においてワイアットはこう語っている。
『足を失ったことで私は新しい
自由を手に入れたのかもしれない』と。

(是非ともジョン・グリーヴスの『ソングス』も聴いてみてほしい。)


COCKOOLAND

前作SHLEEPから6年ぶりとなる新作アルバム(2003年)
本当にこの人の作品は凄い。言葉にできない音楽と形容されるべき
優しく深い音楽。繊細な音一つ一つが
じわじわと染み込んで、聴き終わると不思議な感覚に包まれる。
知らず知らず繰り返し聴いてしまう中毒アルバムでもある。

サウンドは、シュリープとロック・ボトムの時期が合わさった感じで、
集大成とも言えるような傑作だ。聴いた瞬間に筆者の2003年ベストになりました。
前作に引き続きフィル・マンザネラや、ポール・ウェラー、ブライアン・イーノ、
デイヴィッド・ギルモアetc,,,が参加。
インタビューでワイアットが語っていたように、オールド・ヨーロッパ的な
風景が感じられ、ジャズ、ポップ・ミュージックの良質な部分を抽出し、
そこにワイアットの必殺ヴォーカルが乗る。
政治色が濃い歌詞ももちろんあるが、全体的に穏やかである。
様々な音楽にインスパイアされ、様々な人とコラボレイトしてきた
ワイアットの生き様を感じることができる。
この人には、ずっと歌いつづけて欲しいと願う。

16曲入り大ヴォリューム。様々な仕掛け(?)もある。2部構成に
なっており、30秒の間が開いている。
『1年に1曲作るのがせいぜいだから・・・』とライナーで語っているように
このアルバムはカヴァー曲も多い。シップビルディングのように、そのカヴァー曲も
もちろんワイアット色濃厚。国内盤には、ボーナス・ディスク付。