THE RESIDENTS |
アメリカ最大の謎バンド。レジデンツ。永遠のアヴァンギャルド、キャプテン・ビーフハートとも肩を並べる奇怪な存在。そして、認知度は最低という愛すべきアヴァンギャルド匿名目玉集団である。 その歴史は、60年代後半のアメリカ小都市サンマテオに始まる。彼等の尊敬するビーフハートの作品に関っていたハル・ハヴァースタッドの元にテープを送るが、返送されてしまう。その時、彼等の名前が不明だったためにハヴァースタッドは宛名に『THE RESIDENTS』(居住者達)と書く。それが彼等のバンド名の由来となる。そして、1971年に彼らは自らインディー・レーベル(ラルフ・レコーズ)を設立し、翌年にクリスマス・シングルをリリースする。(サンタ・ドッグ) 彼らのアイデア、創作意欲は底知れず、数々の偉業を成し遂げる。それは、アート・ヴィデオ(ミュージック・ヴィデオ)の発明だったり、(ニューヨーク近代美術館は彼らがそのアート・フォームの発明者だと認定)その後も、様々なメディアを駆使し続け、芸術活動を行う。現在ももちろん彼等の歴史は続いている。オフィシャルHPも参考にされたし。 ところで、サリンジャー(小説家)がメンバーにいた、と言うのはやっぱりデマでしょうかね。 |
とりあえず、私も彼等の作品は膨大な数なので、全部聴いていない。だから、レジデンツについて語るのはオコガマしいのだけれど、少しでも認知度を上げようという思いに免じて許してください。ちょくちょく買っていく予定なんで。とりあえず、彼等の作品はコンセプト・アルバムはもちろん、数々の試みが行われているため、どれを買っても刺激的に違いないと思う。とりあえず、70年代のアルバム、1stや、エスキモーあたりから触手を伸ばしていってみてはいかがでしょうか?案外聴きやすかったりするのが、コマーシャル・アルバムや、ダック・スタッブ〜あたりです。 ちなみに、メンバーの名前はもちろん分からないので、略しています。関った人は一応簡単に書いていますが。(全てアルバムの解説、クレジットを参考にしています) |
MEET THE RESIDENTS |
M1,BOOTS(ブーツ〜にくい貴方),ナンシー・シナトラをパロディにした、ふざけ半分のコラージュ。歌詞が馬鹿すぎる! M2,NUMB ERONE(不器用なエローネ),アコースティックな温もりとちょっとズレかけの演奏のインスト。 M3,GUYLUM BARDOT(ギーラン・バルドー),前曲とは繋がっている模様。サックスが哀愁たっぷりに、そしてヴォーカルが乗ったと思いきや、何やら聴いたことのある声。。イーノにそっくり! M4,BREATH AND LENGTH(呼吸と長さ),さらに続いた曲になっており、こちらはギター・ノイズが塗されたポリリズムの妙と、女性ヴォーカルのやる気のなさがぴったり。 M5,CONSUELO'S DEPARTURE(コンスエロの出発),コラージュ、ノイズ、インダストリアル・ロックの原型のような崩れたもの。怪しい舞踏的なチープなシンセがまたしてもふにゃふにゃと挿入されており、アクサク・マブールそっくりなフレーズが。もちろん、レジデンツの方が早だしです。 M6,SMELLY TONGUES(鼻につく言葉づかい),前曲から続き、不気味な電子音、チープなシンセがリードし、機械音がアクセントになり、棒読みもいいとこのヴォーカルがのる。何故か心地良い。 M7,REST ARIA(休息のアリア),哀愁、憂いを帯びたピアノ曲。時折不協和音が鳴るが、お構いなし。サックスの音色も外れまくりで、最後はなんだか不協和音だらけのモザイク状態に。常に居心地の悪さが感じられ、落ち着けない。 M8,SKRATZ(スクラーツ),レコメン系のような音とノイズ、セリフがのる。で、その内容は相変わらずナンセンスもいいとこ。 M9,SPOTTED PINTO BEAN(まだらなまだらインゲン豆),ピアノ前奏から、今度はオペラ。突拍子のないサックスで拍手が起こり、ミュージカルのような展開。中盤からピアノはもはや不協和音しかなくなる。編集された感があるが、なんか無理やりっぽい編集に感じる。 M10,INFANT TANGO(幼児のタンゴ),ベースがリードし、チープなサックスとともに、ビーフハートのようなダミ声が絡む。危機的なシンセをオブリガードに、ギター・カッティングで進行。次第に、ペコペコとパーカッションの音が聞こえ、ハイハットをかき鳴らし、サックスがリードしてお終い。なるほど、幼児のタンゴか。 M11,SEASONED GREETINGS(気の利いた挨拶),どこかで聴いたことのあるピアノのフレーズから、サックスが崩れ気味に鳴り響き、次第に脅迫的な展開へ。そして、この曲はクリスマス・ソングらしい。 M12,N-ER-GEE(CRISIS BLUES)(エ・ナ・ジー〜危機のブルーズ),脅迫的なピアノの乱打、不協和音の嵐。変テコなセリフが随時挿入。ビートが表れ、何やらロック的な音楽が流れるが、再びノイズにまみれる。怪しさ満点のチープな民族調の展開になり、これもまた変テコなリズムに成変わる。 |
1973年2月〜10月録音、1974年4月発表の事実上の1stアルバム。 とりあえず、有名すぎるこのジャケ、どちらかと言うとビートルズよりレジデンツのジャケの方が個人的に愛着があったりします。(ビートルズ・ファンの方ごめんなさい!) しかし、このアルバムのジャケットは重要である。何故ならば、このパロディ精神こそが彼らの音楽を語る上でも外せない魅力だからである。つまり、毒々しさ、人をからかったような態度、そしてそれを真剣にやる彼等の真面目さがウリなのだ。 サウンドの方は、とりあえず崩れに崩れまくった展開の応酬で、いつの間にかノイズに消されていたり、とりあえず展開は『あっ!さっきのはナシね』とでも言わんばかりの強引さ。様々なテープ処理を施し、コラージュ、ノイズ、パロディ、インダストリアルとこれでもか、と言わんばかりの詰め込み状態。80年ぐらいならまだしも、74年にこれなら、そりゃぁ売れないだろ、と思う。このアルバムは結構聴く人を選びそうで、アヴァンギャルド大好き人間以外は、恐らく受け付けないどころか、怒るような気がしないでもない。でも、レジデンツの原点は紛れも無くこれであり、楽しさはもちろん、これを真剣にやって出しちゃう人達をやっぱり愛さないわけにはいかないでしょう!つまり、聴きなさい。 |
DUCK STAB, |
M1,CONSTANTINOPLE (コンスタンティノープル), この世のものとは思えないこの声!洗脳的なヴォイス・エフェクト。流れはポップで、アルバムを象徴している。 M2,SINISTER EXAGGERATOR (不吉で大げさなことを言う人), M1から繋がるような旋律が仕様されていて、さらにこの世のものではないエフェクトがかけられ、不吉な残響音を残していく。 M3,THE BOOKER TEASE (本屋のからかい), インスト。ノリの良い曲調にアクサク・マブールのようなチェンバーぽさ。 M4,BLUE ROSEBUDS (青いバラのつぼみ), 唯一人間らしい歌声から始まる。シアトリカルな歌モノ。リズムと歌のみで展開していく。歌詞にエスキモーが登場。次作への布石かな。 M5,LOUGHING SONG (笑いの歌), ひたすら機械的で不気味な笑い声がアクセントに、リーディングを主として展開。チェンバー。 M6,BACH IS DEAD (バッハは死んだ),バッハは死んだ、という掛け声(?)とチープな音のなぞりあい。 M7,ELVIS AND HIS BASS (エルヴィスとボス),人をおちょくったようなアンサンブル。最後はノイズにまみれて消えていく。 M8,LIZARD LADY (蜥蜴婦人), これも歌がリードし、バックはひたすら不気味に彩る。 M9,SEMOLINA (セモリーナ), シンセと歌の絡みあい。 M10,BIRTHDAY BOY (バーステイ・ボーイ), ハッピーバースディの歌から泣き声まで。シアトリカル的な歌で展開するが、詩の中身の方は全く意味不明。 M11,WEIGHT-LIFTING LULU (ウェイトリフティング・ルル), M12,KRAFTY CHEESE (クラフティ・チーズ), M13,HELLO SKINNY (こんにちは、お痩せさん), M14,THE ELECTROCUTIONER (電気椅子処刑人), ヒーロー戦隊劇のような勇ましい曲調。ザッパを思い出します。 |
1978年発表。(1977年10月〜1978年8月録音) 彼等の代表アルバムであると同時に傑作。元々は、2枚のEP(M1〜M7、M8〜M14)からなり、これはそれをまとめたもの。 EP向けとあってか、かなり歌モノ重視に作られている。歌モノ重視とは言っても、全く便宜的で実際にはレジデンツならでは、のおどろおどろしさが爆発していて、テープ処理、エフェクトが歌を楽器にしている。 こういうのをポップと呼ぶのか、甚だ疑問があるが、レジデンツにしてはポップな方かな・・・?まぁ、歌えない非現実ポップと言うべきだろうか。 後のコマーシャル・アルバムに繋がるコンパクトさが魅力。 詩の方も相変わらずの奇天烈さで、シュールにぶっ飛んでいて面白い。おばけ屋敷に入ったかのような異世界が味わえる。ヴァラエティ感は捨て、基本的に曲の印象は全体的に筋が通っている。七色の声が次から次へと様々なイメージを膨らませる。異世界の子供の声から、子守唄、紳士的な語り。エトセトラ。 |
ESKIMO |
All INSTRUMENTS AND VOCALS BY THE RESIDENTS ASSISTED BY SNAKEFINGER WITH SPECIAL HELP FROM RECORDING GUESTS; CHRIS CUTLER -precision drumming DON PRESTON -inspired synthesizing PRODUCED by THE RESIDENTS M1,THE WALRUS HUNT (セイウチ狩り) |
1979年発表。録音時期は1976年4月から1979年の5月。レコーディングにはクリス・カトラーが次作とともに参加している。彼等は極寒の地のオペレーターに変身した。 先ずここで、『エスキモー』について簡単に触れておく。エスキモーとはグリーン・ランドからシベリア東部にかけての北極圏で生活をするモンゴル系子孫の遊牧民族のことを差す。氷の家に住んでいると思われがちだが、実際アラスカにおいては昔、鯨の骨や流木で作られた家に住んでいたようで、現在に至ってはベニヤ板を用いた比較的現代的なヨーロッパ式の住居に住んでいるようだ。ただし、この作品が出た当時は現代とは大よそかけ離れた住居に住んでいた模様。尚、エスキモーの本来の意味は「生肉を喰らう人々」という意で、彼等は自分達のことをこう呼ばれるのを嫌い、現在は『イヌイット』と呼ばれている。食生活は基本的に猟を中心としたものでスーパーもあり基本的にあまり私達と変わらない。交通手段はスノーモービルや犬ゾリ、現代においては車も用いられている。 彼等の文化・伝統という意味において、重要なのが『エスキモー・ダンス』だろう。食後や捕鯨後(クジラ祭り;カグロック)等に踊られ、太鼓(直径1Mぐらいの)を中心に、唄い踊る。男性と女性は基本的に踊りが違うらしく、また地域によって踊りが変化し、様々な感情を表したヴァリエーションに富んだ踊りのようである。その他にも様々な伝統が地域によって変わって現在も引き継がれている。(参考HP;http://homepage1.nifty.com/arctic/contents/fcontents.html)尚、この文章に差別的な意図は含みません。 さて、レジデンツの『エスキモー』の方だが、これは彼等にとってはかなり亜種のアルバムである。実際にこのアルバムの前後のアルバムと音楽的関連性はかなり薄い。このアルバムは特に北極圏に近いエスキモー(多分アラスカ周辺だろう)のことについて描かれていて、政府により生活保護を受ける前のエスキモーの生活を描いたものである。 |
THE COMMERSIAL ALBUM |
EASTER WOMAN(復活祭の女) | ゴシック・ホラー葬送曲。あの世へ連れ去られる妻の足跡は残らない。 |
PERFECT LOVE(完全な愛) | 完璧な愛って結局逃げるらしい。チープ・シンセ。ゴシック・コミカル・ヴォイスの啓示。 |
PICNIC BOY(ピクニック・ボーイ) | 重圧というが、逃げる足は結構軽やか。 |
END OF HOME(家庭の終わり) | 家庭の終わりは、悲しさと虚しさ。鬱々とスローリーに怠惰的に。 |
AMBER(琥珀色) | 優雅な気分。人生を優雅に笑い飛ばす。 |
JAPANESE WATERCOLOR(日本画) | インスト。少し日本ぽいが、チープ。それがなんともレジデンツ。 |
SECRETS(秘密) | 第三者の眼差し。秘密の花園に血が見える。 |
DIE IN TERROR(恐怖で死ぬ) | 恐怖の足跡が迫ってくる。 |
RED RIDER(赤いライダー) | 赤いものが通り過ぎる。 |
MY SECOND WIFE(私の2度目の妻) | 風を切って歩く。口笛を吹きながら。三度目の妻をも考える。 |
FLOYD(フロイド) | インスト。邪悪なシンセが重なり道を示す。 |
SUBURBAN BATHERS(郊外の泳ぐ人) | 太陽は生きている。我々は監視されている。 |
DIMPLES AND TOES(えくぼと爪先) | 高速で地下水道をくぐりぬけ、彼女にキスをする。 |
THE NAMELESS SOULS(名もなき魂) | こういう'彼女'は現代にも多く生きている。名もなき魂が侵食していく。 |
LOVE LEAKS OUT(愛は漏れる) | 愛が水のように滴り落ちる。その愛は違う人へと渡る。その繰り返し。 |
ACT OF BEING POLITE(礼儀正しい振る舞い) | ヘンリーカウ。とジョン・レノンの詩。 |
MEDICINE MAN(薬売り) | インスト。殺人リズム。お前は死を運んでいく。 |
TRAGIC BELLS(悲劇の鐘) | 俺もわからない。あの悲劇の鐘を鳴らすのはあなたぁあああああ! |
LOSS OF INNOCENCE(純潔の喪失) | 忍び寄る喪失。タイム・リミットは1分。 |
THE SIMPLE SONG(単純な歌) | 単純でいいじゃないか。薄っぺらいのっぺらぼう。宇宙人から地球人へ。 |
UPS AND DOWNS(上がり下がり) | 泳ぐシンセ。歌も上がったり下がったり。 |
POSSESSIONS(所有物) | 欲望をフォーカス。 |
GIVE IT TO SOMEONE ELSE(誰か他の人にあげて) | ポップは誰か他の人にあげて、アヴァンに私を展開させる。 |
PHANTOM(幻影) | インスト。こんな曲に合わせてオペラ座の怪人はやってくる。 |
LESS NOT MORE(少なく多くではなく) | 量の多さは重要。レジデンツが量を計っている。 |
MY WORK IS SO BEHIND(私の仕事は大幅に遅れている) | 言葉のリズム。レジデンツ・ミーツ・ザ・ヒップ・ホップ が、漫画の世界から登場。 |
BIRDS IN THE TREES(木の中の鳥たち) | 人間はどうやって埃を振り落とすのだろうか?粉々の愛を拾い集めるのは鳥たち。人間は粉々にするだけ。 |
HANDFUL OF DESIRE(一握りの欲望) | 一握りの欲望をシンコペーション。顕微鏡で除いてみると、そこには・・・?! |
MOISTURE(湿り気) | 湿度は高い。汗だくなヴォーカルと揺らぐシンセ。除湿不可能。 |
LOVE IS...(愛とは,,,) | 孤独な人の暮らし方。ミーツ・ザ・ドッペルゲンガー。 |
TROUBLED MAN(苦悩の男) | 苦悩と悲劇に取り憑かれた男の顔 |
LA LA(ラ・ラ) | レジデンツ・ミーツ・ザ・アクサク・マブール。 |
LONELINESS(孤独) | 永遠のテーマである。孤独は普通なのだ。何故わかってくれないんだ〜 |
NICE OLD MAN(感じのいい老人) | 優しく語る人は、一番人の驚きの壷を心得ている。 |
THE TALK OF CREATURES(生き物の話) | 泣くな。DNA。 |
FINGERTIPS(指先) | 指先ほど人が分かるものはない。 |
IN BETWEEN DREAMS(夢の合間に) | インスト。1分間のアンビエント。かと思えばゴシック・シンセ。 |
MARGARET FREEMAN(マーガレット・フリーマン) | マーガレット・フリーマンのノイズ。 |
THE COMING OF THE CROW(カラスの到来) | インスト。カラスの群れは一種のノイズの洪水の絵と似ているのである。 |
WHEN WE WERE YOUNG(我らの若きとき) | インスト。記憶の回想。儚く優雅に美化され続ける私達の記憶。大概そんなものだ。 |
1980年発表。 コマーシャル・アルバムという題名通り、ややコマーシャル寄りのアルバム。ダック・スタッブ辺りからの流れが顕著に窺い知れる。(ちなみにこの前のアルバム(エスキモー)とは音楽的関連性は薄い) コマーシャルだけでは、別になんてことはない。このアルバムで、なんと1分ジャストの曲を40曲収録という とんでもない偉業(?)を成し遂げたのであった。様々な曲群が並んでいます。というわけで、私も無謀に 全曲解説(?)に挑戦します。はっきり言ってオナニーです。 基本的なサウンドは、チープなシンセ・ノイズ、SE、とモザイクがかかりまくりの言葉(歌)が絡まる。 ゴシック系からテクノ、アンビエント、ひねくれポップ、ラーメンに入れるコショウ程度のノイズで 1分でビシっと終わらせます。楽曲を膨らませようと思えばいくらでもできそうな曲が多いが、 それでも1分に拘るというヒネクレ加減はレジデンツならでは。歌詞があればより面白いので是非とも国内盤で入手を。 尚、フレッド・フリス、クリス・カトラー等、レコメン勢も参加! |