OSANNA

イタリアン・プログレの中でも一際、異彩を放つオザンナ。
ナポリ出身のこのグループは、イタリアン・プログレに顕著なクラシック思考とは違い、
古代を思わせるようなフレーズを多用したり(パレポリ)、英国的であったり(しかし紛れなくイタリア、ナポリの匂いを放出)、
何処か彼らの記憶を辿るようなサウンドが印象的だ。
瞬間の爆発力はクリムゾンを思わせるものもあり、一筋縄ではとてもいきそうにもない。
また何処かシアトリカルな毎回違う彼らの風貌も面白い。


L'Uomo

ELIO D'ANNA -fute,sax
LINO VAIRETTI -vocal,guitar,keyboards
DANILO RUSTICI -bass
MASSIMO GUARINO -drums

1971年発表の1stアルバム。デビュー・アルバムながらヘヴィーな感覚はここで
すでに発揮されている。この1stでは、彼等のルーツとでも言うべきジミ・ヘンドリクスの影響が濃い
ギター、ジェスロ・タルのような英国的要素が多分に見られる。そして、オザンナの持つアンダーグラウンドの
臭いも充分。アンダーグラウンド異種格闘技戦。

美しいアコーステックな響きとキーボードが怪しく交差するM1,INTRODUZIONE
ヘヴィに荒々しく展開していく。そしてフルートがある種の臭みを発揮する。
M2,L'Uomo、再びジェスロ・タルのようなフルートとアコースティック・ギター。イタリア語がのると
やはりイタリアらしいと思わざる得ないが何処か英国と交差した情感が感じられる。
M3.MIRROR TRAIN
ギターがハードに、ヘヴィに絡むハード・ロック。中盤からややジャジーに展開する。ランニング・ベースが心地よい。
最後の方のギターソロも面白い。
M4,NON SEI VISSUTO MAI、ギターがかなりぎこちなく感じられるのが逆に面白い。
非常に荒々しく、こんな演奏でいいのかと思うぐらいに微妙なライン。逆にそれがスリルかもしれない。
M5,VADO VERSO UNA META,ブルーズ・ロック。M6,IN UN VECCHIO CIECO、コーラスが格好よい。
おぼろげなファズ・ギター、疾走するフルート、全体的な流れはバラード調かと思いきや、いきなり爆発する。
サックスが荒れ狂い、混沌としてゆく。
M7,L'AMORE VINCERÁ DI NUOVO,静かに叙情的に進み、
これまでの荒れた展開がまるで嘘のように大人な一面を見させる曲だ。
M8,EVERYBODY'S GONNA SEE YOU DIE。ハードなロックンロール。英語で歌われるのでイタリアっぽさは感じられない。
M9,LADY POWER、これも英語曲。ブルージーな展開のロックン・ロール。前半の怪しさは感じられないが、
やはり彼等のルーツなのだろう。素直に格好良いと思わせる技量はやはり持っている。

前半の荒れ狂うアンダーグラウンドな展開と後半のルーツ的なハード・ロック。やや突拍子もない
展開があったり、ヴァラエティに富んでいる。しかしこの後のオザンナを期待するなら失望するかもしれない。


MILANO CALIBRO 9

ELIO D'ANNA -flute,sax,vocals
LINO VAIRETTI -vocals,keyboards
DANILO RUSTICI -guitar,vocals
LELLO BRANDI -bass
MASSIMO GUARINO -drums,vibraphone,percussion

ルイス・エンリケ・バカロフの目にとまり、サントラ盤として本作はリリースされた。
1972年発表の2nd。バカロフは他にもRDMや、ニュー・トロルス等の作品も手掛けている。
オザンナ作品群の中では、次作のパレポリと並ぶほど人気のある作品である。
映画サントラとあって、最高傑作はやはりパレポリなのだろうが、この作品も
パレポリとは別の魅力を放つアルバムだ。

M1,PRELUDIO、荒々しさが押し込められ、ストリングスがプロローグを彩る。
しかし、すぐさまフルートが荒々しく吹き荒れる。アンサンブルはそれこそオザンナらしく
爆発している。バカロフのストリングス・アレンジもなかなか決まっていて自然と融合されている。
M2,TEMA,落ち着いたバラード調のイントロ。ストリングスが不安をなぞるように加えられ、
アンサンブルへと繋がる。泣きのギターソロが非常に心地よい。M1,M2はバカロフ作曲。
M3,VARIAZIONET、打って変わってブルーズ調のハード・ロック。荒々しさが加わり
暴力的にサックスが唸りまくる。クリムゾンっぽい。
M4,VARIAZIONEU,全曲の混沌から再び場面チェンジされ、幻想的な風景が広まる。
どこかムーン・チャイルドのような空気を感じてしまう。静から動へ繋がる。
今アルバム初のヴォーカルが聴かれるが、英語なのでちょっと残念。(やはりイタリア語の響きが聴きたい!)
後半演奏が爆発。
M5,VARIAZIONEV,悲劇的なストリングスから、急テンポ・アップ。
ジェスロ・タル並の凄まじいフルートだ。次第にソロとなり叙情的に。
M6,VARIAZIONEW,繋がったように
始まるが、演奏はブルーズ色全開のロックへ。ハードなギターが格好良い。もちろんフルートも吹きまくり。
M7,VARIAZIONEX,ストリングスとパーカッション(ドラム)との風景演出か。そのまま終わってしまう。
M8,VARIAZIONEY,再びハード・ロック。かなりアグレッシヴなドラムとギターが凄い。
場面が切り替わり、ややソフトな演奏からギターが重なって行く。非常に混沌とした様相を呈すが
これもそのまま終わってしまう。
M9,VARIAZIONEZ,再びギターがギャンギャンと弾きまくる
ハード・ロックへ。ギターノイズがそのままフェード・アウト。
M10,CANZONA,エンディングなのだろうか。イタリア語によるヴォーカルが大変
情感豊かに響き渡るバラード。ややしんみりとしてしまうが、非常に素晴らしい歌声だ。
聴き入ってしまう。

インスト中心で、サントラともあってバラバラ感は否めないが、バカロフの
ストリングス、荒々しいハード・ロックを主体とする演奏、最終曲の歌ものまで
非常に満腹感のある一枚。
個人的には、もう少しヴォーカルが聴きたかったが、サントラともあってしょうがない。
傑作!


PALEPOLI

1973年発表の3rd。彼らの最高傑作である。
イタリアン・プログレ陰の代表とも言われる理由は一聴すれば分かるだろう。
また、異教的な怪しい雰囲気も内ジャケからすでに感じとれる。
寺山修司の作品は、母子の愛憎劇のような作品が多かったが、彼らの場合『ナポリ』や『文化』
に対する愛憎劇なのかもしれない。
パレポリとは、植民地都市に由来し、古代都市への幻想が姿形を変えてここに表れている。

M1,ORO CALDO、STANZA CITTÁ〜間奏 、人々の行き交う様子、会話、古代都市の幻想風景がおぼろげな記憶とともに
表れる。遥か彼方の記憶を巡る旅。記憶が入り混じりながら、南部舞踏タランテラのリズムが表れる。
祝祭ムードも高まりを覚え、そのまま疾走していくのかと思いきや、またも記憶が遮断する。
叙情的なフルート、ギター、ヴォーカル、メロトロンが静かに物語の序章を刻む。
サックス、フルートが爆発的な盛り上がりを示す時、やはりクリムゾン的だと思ってしまう。
そこに切り刻まんばかりのメロトロンが流れ込む。(ひたすらクリムゾン的)
再び、物語がスタートを切るような猛烈なアンサンブルが襲う。
クライマックスにも似た喧騒を迎えるが、鋭利な刃物のようなギターで再び幕を開ける。
息が出来ないような重苦しい雰囲気が占めるが、時々顔を出す叙情的な
ヴォーカル、アンサンブルが心地よい。混沌を挟み、オープニングの記憶が表れる。
ここでは、さらに脅迫的な記憶の抽象で、人々の会話は姿を見せない。そして、再び脅迫的なキーボード、
ドラムが表れる。
M2,ANIMALE SENZA RESPIRO、記憶が荒れ狂い、残骸が残るような
景色とともに優しいヴォーカルが訪れる。そして混沌にも似た重々しいアンサンブルへ。
クリムゾン?と思わせるようなアンサンブルだ。フォーク・タッチな叙情が優しく包んでいく。
おぼろげに景色が変わりながら、幾度ともなく混沌と静寂を行き来する。人々の記憶は
深く入り組んでいる。そんな重層的な面を重ね合わせていく。奥の方へ、奥の方へ。

とんでもない作品だ。人間の持つ無意識、記憶にアクセスしたようなある種のタブーを破っていく
ようなものかもしれない。夢を見る時、ストーリーは多分一貫していないだろう。それと
良く似ている。ここでも複雑に入り組んだ展開が待っている。イタリアン・プログレ絶対的名盤。


 

 

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