NATIONAL HEALTH

カンタベリー・シーンとは、様々な人脈が入り混じった一つの「創造の場」でもあった。
そこに制限はない。1970年代中盤はまさしく人が入り混じりながら、数々の作品が生まれていった。
このナショナル・ヘルスもそういったグループのうちの一つで、明確なメンバー固定はなかったはずで、カンタベリー系のミュージックを表していると言える。

おそらくは、ギルガメッシュが解散する時期に、このナショナル・ヘルスは結成された(おそらく1975年)。
ハットフィールド・アンド・ザ・ノースとギルガメッシュ、双方のメンバーが合体するかのように結成される。彼等は様々なメンバー(例えば、ビル・ブラッフォード、モント・キャンベル、スティーヴ・ヒレッジ等)が入り乱れながら、数々のセッションを行っていく。(この当時の演奏は近年発表された発掘版、「
MISSING PIECES」(オリジナル・ナショナル・ヘルス)として発表されている)

1977年に1stアルバム「NATIONAL HEALTH」を発表。
時は同じくしてアラン・ガウエンがギルガメッシュ再編に動き、脱退する(「ANOTHER FINE TUNE YOU'VE GOT ME INTO」をリリースしている)。ヘンリー・カウからジョン・グリーヴスを迎え制作された2nd「
OF QUEUES AND CURES」を1978年にリリースしている。

この後、デイヴ・スチュワートがブラッフォード結成へと参加し脱退するが、アラン・ガウエンが再びナショナル・ヘルスに加わっている模様(ソフト・ヒープの活動も始まっている)。
アラン・ガウエンの体調が悪化し、結局グループは活動を停止する。そしてアラン・ガウエンが白血病によりこの世を去る。ガウエンの死後、一時的に再編され、1983年「
D.S.AL CODA」(最終楽章)を追悼盤としてリリースしている。

現在、発掘音源として先述した「MISSING PIECES」,「playtime」(←ライブ)が発表されている。編集版として「COMPLETE」も発売されています。

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これもカンタベリーの楽しみ方の一つでしょうか、この時期の人脈構図は非常に入り混じっていて分からない部分が多い模様です。このナショナル・ヘルスもその分からない所に属していると思います。
サウンドはまさしく、カンタベリーシーンの総決算(?)、シンフォニックで広がりのあるフュージョン。
勿論この時期に隆盛したフュージョンとは一味も二味も違っていて、カンタベリーらしい独特の浮遊感を味わえます。ハットフィールドやギルガメッシュが好きな方なら問答無用、絶対必聴だと思われます。オリジナル2枚とも傑作です。因みに私は2ndの方が好きです。

現在アルカンジェロからの紙ジャケが発売されています。輸入盤も簡単に買えると思います。ただ、最終楽章だけはなかなかないです。

 

雑学にもならない雑学編:NATIONAL HEALTHについて
NATIONAL HEALTHとはイギリスの医療制度の事を指すらしいです。正確にはNATIONAL HEALTH SERVICE(通称NHS)。公共医療保険制度。
余談ですが現在のイギリスのNHSはほぼ崩壊状態らしいです。何でも慢性的に医者、看護婦不足で治療が追いつかないとか。「揺り篭から墓場まで」という言葉も消え去っているのではないか、と。どうでもいい話ですが、イギリスでは医者や看護婦は特殊公務員として扱われるようで税金は免除される模様です。ただし、イギリス国内においての資格しか有効でないそうです。イギリスで取得した資格はオーストラリア等でも通用するらしいですよ。かなり話が逸れました。ちなみに肝心の70年代後半の医療制度はどうだか知らんです。
彼等がナショナル・ヘルスと名乗った理由は知らないですけどおそらく皮肉かなにかでしょう。

 

NATIONAL HEALTH

DAVE STEWART -organ,electric & acoustic piano,clavinet
PHIL
 MILLER -guitar
NEIL
 MURRAY -bass
PIP
 PYLE -drums,cowbell,tambourine &          gong,glockenspiel,finger cymbals,shaker,bells,pixiephone
WITH
JOHN MITCHELL -percussion,temple blocks,guava,congas
ALAN
 GOWEN -moog,electric & acoustic piano
AMANDA
 PARSONS -vocals
JIMMY
 HASTINGS -flute,clarinet

RECORDED AT THE POINT,VICTRIA,LONDON 1977 ON THE MOBILE MOBILE.
PRODUCED
 BY NATIONAL HEALTH

1977年発表の1stアルバム(一部、雑誌の解説では1978年と書いてあったりもする)。
1975年、ギルガメッシュ、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースが解散し、デイヴ・スチュワート、アラン・ガウエンが中心となって結成された。このナショナル・ヘルスは充電期間(セッション期間)が非常に長く、当時のイギリスのパンク・ムーヴメントの関係からか、なかなか世に出ることがなかったようだ。これは困難を極めながらもリリースされた1stで、カンタベリーらしいサウンドと言う意味では非常に贅沢な一枚だと思う。
で、この辺りも非常にヤヤこしいのだけれど、この時点ですでにアラン・ガウエンが脱退している模様で、ここではゲスト扱いになっている(とは言っても前曲参加している)。何にせよ、ダブル・キーボードという編成で重厚で華麗なインストゥルメンタル・ジャズ・ロック作品になっている。
M1,TENEMOS ROADS 
M2,BRUJO
M3,BOROGOVES
 (excerpt from part two
M4,BOROGOVES (part one
M5,ELEPHANTS 
カンタベリーサウンドに顕著なように、フィル・ミラーのファズ・ギターとキーボードのファズ・サウンドの違いがよく分からない。それはさて置き、ナショナル・ヘルスはハットフィールドの至福感に酔った私としては、再びその至福感の続きを味わえるような感覚になれるグループだ(特にこの1st)。ギルガメッシュにも顕著なユーモアラスな遊び心も取り入れた極上のサウンドである。
アマンダ・パーソンズのニンフのようなヴォーカリーズが天国の如き錯覚を起こさせる。煌びやかなキーボードの音、時にスリリングなキーボード、ギター、ドラムのインタープレイ、躍動感をもたらすマーレイのベース、コンパクトなメリハリ感こそないが、静と動のコントラストが非常に素敵だ。流れるように全曲身を任すことができるだろう。
シンフォニックな広がりを見せるカンタベリー・サウンドの頂点。

 

 

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