NEW AGE STEPPERS |
エイドリアン・シャーウッドの呼びかけに応じた、THE SLITSのアリは、当時のイギリスのニュー・ウェイヴ・アーティストの先鋭達、またはレゲエ・アーティストを堂々結集させた。 今にして思えば超破格プロジェクト『NEW AGE STEPPERS』(以下NAS)。 当時に至っては、彼等は評価とは裏腹、無名に近くあまり注目されてはいない。 エイドリアン・シャーウッドが設立したON-U SOUNDは、彼の音楽ヴィジョンを表現しようと設立されたレーベルで、その第一弾プロジェクトとして結成されたNASこそ、ON-U SOUNDを象徴するグループである。 1980年、Fade AwayをON-Uの第一弾7インチ・シングルとして発表。 その後、アリはロンドンからジャマイカに移り住み、今もそこで暮らしているらしい。 |
ダブ、ファンク、レゲエ好きだけでなく、いわゆるNO WAVEアーティスト好きにとっても、必聴もののアーティストでしょう。 基本的に私、ポップ・グループは好きなんだけれど、マーク・スチュワートのヴォーカルがあまり好きでなく、このアルバムは幸い彼のヴォーカル曲は少ない(笑) それにしても、アリのヴォーカルは良いよね。私は彼女が大好き。スリッツ万歳。 3枚出ていますが、全部買っても損はしません。が、とりあえずロック色が濃い1stは万人に聞かれるべき、ってことで1stをお薦めします。現在は紙ジャケで再発され、(3rdに至っては初CD化)3枚とも簡単に入手できるでしょう。ちょい、高いですけど。 |
THE NEW AGE STEPPERS |
BRUCE SMITH, "STYLE" SCOTT, CECIL, "SHOES", DAN -drums,percussion GEORGE OBAN, STEVE BERESFORD -bass JOHN WADDINGTON, VIV ALBERTINE, "CRUCIAL" TONY -guitar STEVE BERESFORD, SEAN -piano ARI, VIV, MARK -vocals "NOBBY" TURNER, STEVE BERESFORD, BRUCE SMITH -percussion effects BRUCE SMITH -synthesizer VIKKI -violin PRODUCED & MIXED by ADRIAN SHERWOOD / NEW AGE STEPPERS ENGINEERS: "NOBBY", BOB |
1980年発表の1stアルバム。 ON-U SOUND第一弾アルバムでもある。現在に於いては、解説にもあるように、パンク・ニューウェイヴの金字塔と言っても、差し支えないだろう(知っている人からすれば)。当時のニューウェイヴ・アーティスト達の音が風化する中で、彼等NASの音がようやく現代において衝撃的だと形容されるようになった。 とりあえず、メンツが超豪華で、THE SLITSや、POP GROUP等、当時のイギリスのアンダーグラウンド・シーンの繋がりがそのままこのプロジェクトに参加していると言っても過言ではない。バイオにも簡単に書いたが、NASはスリッツのアリ・アップを中心として機能していて、ポップ・グループからはドラマーのブルース・スミスが参加、アスワドのジョン・オーバン、クリエイション・レベルのクルシアル・トニー、マルチ・アーティストでもあるステーヴ・ベレスフォード等が主に中心になって1週間で制作された。 簡単に曲紹介すると、M1は、JUNIOR BYLESのクラシック・レゲエのカヴァー。アリのヴォーカルの妖しさが際立っている(もちろん、ダヴ処理も心地良い)。M4は、ポップ・グループのマーク・スチュワートがヴォーカルで参加。M5はクリエイション・レベルのナンバー。M6はスリッツのシングル曲。M7は、BIM SHERMANのカヴァー。M8は、ヴィヴィアン・ゴールドマンのヴォーカルをフィーチャー。ピアノではプログレ・ファンにはお馴染みのロバート・ワイアットが参加(それともサンプリング?)! |
M1,Fade Away, M2,Radial Drill, M3,State Assembly, M4,Crazy Dreamsand High Ideals, M5,Abderhamane's Demise, M6,Animal Space, M7,Love Forever, M8,Private Armies, (BONUS TRACKS FOR JAPAN) M9,Izalize, M10,May I, M11,Avante Gardening, M12,Singing Love, |
はっきり言って、私の中ではセックス・ピストルズやPILと言ったパンク勢なんかより、こっちの方がよっぽど好きだし、よっぽどパンクっぽく聴こえる。(比べるバンドがちょいと違いますけど)個人的な趣味もあるだろうが、要するに古くなっていない音と言えば、このNASの方なのだ。ピストルズやらは再生産され尽くした感があるが、このNASの1stは再生産どころか、唯一無二の奇跡と言っても過言ではない。 レゲエのクラシック・カヴァーにしても、アリのヴォーカル一つでまるで違う磁場を作りだす。(このアルバムは実験色が非常に濃いが、レゲエ・カヴァーに至っては非常に聞きやすくてこのアルバムの敷居をわざと下げている感じがして好感が持てる。)このアルバムはNASの中でも最もRock色が濃く、インダストリアルを思わせる金属音がまるでナイフのようで、それでいてこのダブ処理の響きが心地良く、実に奇妙な感覚が次々と起こる。(故にまるで飽きない。)周知の通り次作以降NASはレゲエ色を濃くしていくことになる。このアナーキーな質感はこの盤のみだ。 |