HELDON

HELDONについての若干の説明。
1968年、パリ5月革命。
RICHARD PINHAS(1951-)はセーヌ川の辺にあるソルボンヌ大学で哲学を専攻していた。仏にいてパリ革命に影響を受けぬ者はいないのだろう、ピナスはその温床でもあるBARRICADEにも参加。後に、クラウス・ブラスキス(ex,MAGMA)と『BLUES CONVENTION』を結成(1969)。翌年、GEORGES GRUMBLATT,GILLES DELEUZE,PATRICK GAUTHIER,COCO ROUSSELS,PIERROT ROUSSELと共に『SCHIZO(スキゾ)を結成する(1970)2枚のEPを残しスキゾは解散。ほぼピナスのソロ・プロジェクトである『HELDON』へと展開する(1973HELDON結成)。現在ピナスは大学で哲学の教鞭を揮う傍ら、ジル・ドゥールズ研究者でもある。

HELDON / ELECTRONIQUE GUERILLA  -1974
HELDON
 / ALLEZ TEIA  -1975
HELDON / Soutien à la RAF  -1975 (ep)
HELDON
 / COCAINE BLUES  -1975 (300 LIMITED RELEASE)
HELDON
 / LIVE IN PARIS"ELECTRIQUE GUERILLA"  -1975 (BOOT LP?)
HELDON / IT'S ALWAYS ROCK AND ROLL  -1975
HELDON
 / AGNETA NILSSON  -1976
HELDON / Perspective 1 bis complément / Perspective 4 bis  -1976 (ep)
HELDON / UN REVE SANS CONSEQUENCE SPECIALE  -1976
HELDON / THE PARIS CONCERT  -1976 (ep)
RICHARD PINHAS / RHIZOSPHÉRE  -1977
T.H.X.TELSTAR / RHIZOSPHÉRE SUITE  -1978 (ep)
RICHARD
 DUNN / SÉQUENCES/MODULATIONS  -1978 (ep-very very rare)
RICHARD
 PINHAS / CHRONOLYZE  -1978
HELDON
 / INTERFACE  -1978
HELDON
 / STAND BY  -1979
RICHARD
 PINHAS / ICELAND  -1980
RICHARD
 PINHAS / EastWest  -1980
RICHARD PINHAS / BEAUTIFUL MAY/NEW YORK  -1980 (ep)
RICHARD
 PINHAS / WEST SIDE/HOUSTON 69  -1980 (ep)
RICHARD
 PINHAS / L'Ethique  -1982
RICHARD
 PINHAS / PERSPECTIVE  -1984 (compilation)
RICHARD
 PINHAS / DWW  -1992
RICHARD
 PINHAS & JOHN LIVENGOOD / CYBORG SALLY  -1994
RICHARD
 PINHAS & JOHN LIVENGOOD / SINGLE  -1996
RICHARD
 PINHAS / DE I'UN ET DU MULTIPLE  -1997

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私の中で孤高とも言える存在がリシャール・ピナス率いるエルドンです。おそらくサウンド的にはプログレ、ミニマル・トランス、テクノ、ノイズ、インダストリアル全ての橋渡しになると云っても過言ではないでしょう。所謂『プログレ』ファンの間ではあまりに置き去りにされている印象が拭えませんが、近年のNW再評価に繋がってheldonもその波に乗れつつあると言っても良いかもしれません(2005年は7作品全てがCAPTAIN TRIP RECORDSより再発)。

初心者の方に「
STAND BY」をお薦めするのが一番妥当なんでしょうが、個人的に1作目から順に聴いていってもらいたいアーティストです。そんなお金はない、という方は先述した「STAND BY」や「ALLEZ TEIA」をお薦めします。

 

ELECTRONIQUE GUERILLA

RICHARD PINHAS -AKS synth,1954 Gibson Les Paul
ALAN
 RENAUD -rhythm guitar on M3
GEORGES
 GRUMBLATT -VCS3 synth on M4
GILLES
 DELEUZE -voices difficiles mais belles on
PATRICK
 GAUTHIER -piano and VCS3 synth on M4
COCO
 ROUSSEL -drums on M4
PIERROT
 ROUSSEL -bass guitar on M4

THIS
 ALBUM IS DEDICATED TO ROBERT WYATT
1974年発表の1st
1973年「HELDON」(ノーマン・スピンラッドの小説より)へと発展、リシャール・ピナスのソロ・ユニットとして起動する。このアルバムが発表された1974年は奇しくもKING CRIMSONが解散を表明し『RED』によってプログレッシヴ・ロックに一つの終止符を打った年である。ピナスは2作目に収められたタイトルからも明らかなようにロバート・フリップの影響を公言している。ただし曲の構築ではなく、持続する音(FRIPP & ENONo Pussyfooting-1973)の影響が顕著で、その他にフィリップ・グラスの影響も濃い。タンジェリン・ドリームが志向したエレクトロニクスとは趣きが異なり、エルドンのそれはタイトルにも明らかなように「ゲリラ」的、つまるところ「瞑想」的ではなく、「ポスト・モダン」的実験の表明である。M4はスキゾ時代の曲で(メンバーも参加)、ニーチェの詩を哲学家ジル・ドゥールズ(GILLES DELEUZE)が朗読で参加している。曲の輪郭が明確で、サイケデリック/アナーキーなムードに包まれていてこのアルバムの中ではやはり異種。
M1,ZIND  (ジンド)
M2,BACK
 TO HELDON  (バック・トゥ・エルドン)
M3,NORTHERNLAND
 LADY  (北国の女)
M4,OUAIS
 MARCHAIS,MIEUX QU'EN 68(ex;"le voyageur")  (よし、1968年より上手く歩もう「旅行者のように」)
M5,CIRCULUS
 VITIOSUS  (シンクルス・ヴィティオスス)
M6,BALLADE
 POUR PUIG ANTICH,(révolutionnaire assassiné en Espagne)  (プイグ・アンティヒに捧げるバラード「スペインで殺された革命家」)
AKSシンセが鳴らす構造的浮遊感は誰もいなくなった工業都市を思わせる。そこにフリップナイズドされたギターのロング・トーンが脱メロディー的構造に沿うように標榜する。M6の具体音/効果音の類は今思うと時代性を感じてしまうが、後のインダストリアル・ロックの前触れを思わせる。
ここではピナスが志向する音が拡散され全容を掴みにくいが、事実上ソロである本作の『冷ややかなウネリ』は当時のジャーマン・プログレ勢と比べても群を抜いている。因みにこのアルバムは、サウンド的には対称的であるロバート・ワイアットに捧げられている。

 

 

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