GRYPHON

1970年、イギリス、ロイヤルカレッジ・オブ・ミュージックの生徒であったブライアン・ガランドとリチャード・ハーヴェイの出会いにこのバンドは始まる。

ちなみに、グリフォンとは英国の紋章にも度々使われる(この世に存在しない)合成獣のことで、だいたいのイメージは1stのジャケのような感じだと思って貰ってよい。
このバンドは、当時の英国プログレッシヴ・ムーヴメントの中だからこそ注目された、バスーン、リコーダーを中心とした古楽的なアプローチをしたバンドだった。

二人はもちろん、学校では古楽専攻で、デヴィッド・マンロウを師事し、二人はクリストファー・ウィルソン(リュート奏者)、グレアム・テイラー(ギタリスト)を加えて活動を開始する。
クリストファーは脱退してしまうが、その後ロック畑出身のデヴィッド・オベール(ドラム)が加わる。いつの間にか、彼らはGRYPHONと名乗るようになり、本格的にバンド活動に精を出す。

73年に1stアルバム『GRYPHON』でデビューを果たす。
彼らは、サウンドに重量感を持たせるために、エレクトリック・ベースを導入しようと考え、フィリップ・ネスターが加入する。
シェイクスピアの『テンペスト』の音楽製作の以来とともに、彼等は2ndアルバムの制作にとりかかった。
74年5月に2nd『MIDNIGHT MUSHRUMPS』が発表される。

スティーライ・スパンとの共演を果たしたり、彼等の音楽活動は順風満帆だった。彼等はイエスのマネージャーの目にも止まり、11月からのイエスのアメリカ・ツアーへも同行することになる。(アメリカ・デビューも果たす)
その辺りから、彼等は3rdアルバムの制作を開始する。
同年、驚くべくハイペースで3rdアルバム『RED QUEEN TO GRYPHON THREE』を発表。

次第にロック色を強めて行き、翌75年にはトランスティック・レーベル最後の作品ともなる4thアルバム『RAINDANCE』を発表する。
この後、一枚のアルバム(TREASON)を発表し、1977年彼等は解散する。

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実は私最初の方はこのグリフォン、かなりマニアックな存在として受け止めていたんですが、日本でも3rdまではほとんどリアルタイムで国内盤も発売されていることを知り驚きました。
彼等の音楽は中世古楽、トラッドの引用を中心としたグループで、とても唯一無二の音楽を作っていると思います。
そういう古楽、トラッドの面が濃い傑作を聴きたい方は、2ndを。
イエスの影響も受け、ロック色を次第に増していく彼等の最高傑作と謳われている3rdももちろんお薦めです。
個人的には1stと2ndが非常に大好き。

昨年、秋ぐらいにアルカンジェロから紙ジャケが4thまで発売されていて、それらはまだ比較的簡単に入手できるのではないかと思われます。
5thのトリーズンも簡単に買えます。輸入盤では2in1仕様で、値段も安いです。(私は2in1が大嫌いですけど)

 

GRYPHON

BRIAN GULLAND -basson,crumhorns,recorders,keyboards,vocals
RICHARD
 HARVEY -recorders,crumhorns,keyboards,guitar,mandolin
DAVID
 OBERLÉ -drums,percussion,vocals
GRAEME
 TAYLOR -guitars,keyboards,recorder,vocals
1973年発表の1stアルバム。邦題:鷲頭、獅子胴の怪獣。
それにしても、邦題はグリフォンの説明のまんまですね。凄いセンスだ。
バイオでも触れた通り、彼等のサウンドの核は、リコーダー、バスーン、クルムホルン等の古楽器によるもの。そのアンサンブルはプログレ・バンドならではのテクニカルさで、思わず舌を巻く。

この1stは、彼等の原点とでも言うべきロックでも何でもない、トラッド色、ルネッサンス期の古楽がアコースティックな質感で届けられる。この牧歌的な温もりに触れた時、本当にハッとさせられた。
曲の方も、実際のルネッサンス期の古楽曲やトラッド・ソングが取り上げられている。庶民的な視点からの選曲も馴染み易い。彼等の卓越したテクニックによるスリリング溢れる、それでいて極めて牧歌的な(時にはスピーディー)アンサンブルが楽しい。彼等のオリジナルも数曲収録されているが、その他のトラッド・ソングと自然と溶け込んでいるので、タイトルの現代性以外あまり違いが分からない。
M1,Kemp's Jig, (ケンプス・ジッグ) 16世紀後半アノニマスによる出典
M2,Sir Gavin Grimbold, 
(ゲイヴィン・グリンボルド卿) スコットランドのトラッド・ソング
M3,Touch And Go, 
(タッチ・アンド・ゴー) 彼等のオリジナル。
M4,Three Jolly Butchers, 
(愉快な屠殺者たち) イギリスのトラッド・ソング
M5,Pastime With Good Company, 
(オアスタイム・ウィズ・グッド) 英国王ヘンリー8世によって書かれた曲らしい。
M6,The Unquiet Grave, 
(不気味な墓場) 英国バラッド
M7,Estampie, 
(エスタンピー) 13世紀に伝えられた庶民のダンス・ナンバー 今作の白眉(?)。パーカッションが凄いの一言。
M8,Crossing The Stiles, 
(クロシング・ザ・スタイルズ) 彼等のオリジナル
M9,The Astrologer, 
(星占い師) 預言者のことを歌ったトラッド・ソング
M10,Tea Wrecks, 
(ティー・レックス) 13世紀に伝えられた庶民曲。
M11,Juniper Suite, 
(ジュニパー組曲) 彼等のオリジナル組曲。
M12,The Devil And The Farmer's Wife, 
(悪魔と農婦) トラッド・ソング。
まぁ、やっぱり実際に聴かないとこの音は分かりずらいと思う。私にしても、リコーダーなんて小学生の時以来だし。バスーンはリンジー・クーパーのイメージが強いし。クラシックの知識に長けているなんてお世辞でも言えない。
あまり気が進まない例えを使用すると、ドラクエに出てくる夜のパブの音楽みたいな・・・。(もちろん、比べものにならないくらいにこちらの方が技巧的で味わいもあります。)
グリフォンを聴く人って多分2ndと3rdを買って、はいお終いっていう人が多いと思う。この1stも勿論全然良いですよ。とりあえず、それが言いたい。

 

MIDNIGHT MUSHRUMPS

BRIAN GULLAND -basson,krumhorns,recorder,keyboards
RICHARD
 HARVEY -redorders,krumhorns,keyboards,mandolin,harmonium,glockenspiel,vocals
DAVID
 OBERLÉ -drums,percussion,lead vocals,timpani
GRAEME
 TAYLOR -guitars,vocals
PHILIP
 NESTOR -bass,vocals
1974年5月発表の2ndアルバム。邦題:真夜中の狂宴。
サウンドに重さを加えるため、ドラマーのデイヴ・オバリーの旧友、フィリップ・ネスターがベーシストとして加入。1st制作後、ナショナル・シアターのディレクター、ピーター・ホールからシェイクスピア『テンペスト』の音楽製作の依頼を受け、彼等はこのアルバムを制作した。
実際に彼等はかなり注目されており、レコード会社も彼等のプロモーションを真剣に行っていたようだ。このオリジナル・レコードにはブックレットが付属されており、そこには彼等の好きなアーティスト、曲が書かれている。(以外と、ビートルズやイエスが多い)
結果的にナショナル・シアターでの演奏は成功を収め、彼等の注目度はより上がった。

サウンドは1stと違ってここでは全てがオリジナル曲で占められており、ロック的なダイナミズムを増したものの、中世古楽の引用はここでも重要な役割を果たしており、プログレッシヴなアプローチが目につく。非常に唯一無二な音楽ながら、彼等の音楽は非常に親しみやすい。
M1,Midnight Mushrumps, (シェークスピアに捧ぐ/真夜中の狂宴) ストーリーが頭に浮かんでくるような構成を持った大曲。優雅で煌びやかな響き、エレクトリックを大幅に導入した彼等の新境地。全ての感情が表現されているようだ。18分の大曲ながら、飽きない!
M2,The Ploughboy's Dream, 
(若き鋤人の夢)
M3,The Last Flash Of Gaberdine Tailor, 
(綾織人の最后)
M4,Gulland Rock, 
(ガランド・ロック)
M5,Dubbel Dutch, 
(割り勘定)
M6,Ethelion, 
(ギリシア神に捧ぐ/エテリオン) アルバート美術館で依頼のあった演奏の拡張ヴァージョン。
シェイクスピア『テンペスト』のために、リチャードが書き下ろした大曲M1はもちろんのこと、B面に並んだ小曲も捨てがたい。前作は庶民的な曲が多かったが、今作は宮廷音楽を思わせる壮大さ、優美さから、それこそ前作の庶民的な親しみやすい牧歌性をも含んだ傑作である。ストーリー的な描写が聴き手をぐいぐい引っ張っていく。
中世的な質感と現代的なアプローチが見事なまでに合さっている。彼等の強烈なアンサンブルはジェントル・ジャイアントにも全然負けていない。傑作!

 

 

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