GENESIS

その歴史は1965年頃のイギリス、ロンドンにあるチャルターハウス・パブリック・スクールから始まる。(結構エリート出身)アンソニー・フィリップス、マイク・ラザフォードが結成していたグループと、同校に在籍していたピーター・ゲイブリエルとトニー・バンクス、クリス・スチュワート(さらにジョン・シルヴァー→ジョン・メイフューというドラマーに交代)が結成していたグループが合体し、ジェネシスの母体となる(1967年)

1969年、DECCAからアルバム・デビューするも、これはまだジェネシスという名を広めるほどの威力はなく、1970年カリスマ・レーベルに移籍し、そこで発表した『TRESPASS』(侵入)においてプログレ・フィールドに浮上、1971年発表の『NURSERY CRYME』(怪奇骨董音楽箱)にて堂々とプログレッシヴ・ロックの代表格として君臨することになる。またライブにおいても彼等は非常にシアトリカルなパフォーマンスを繰り広げ話題となる。ゲイブリエルの奇怪な変装は必見! その後の歴史は言わずと知れたもので、1975年、バンドの顔であったピーター・ゲイブリエルが『THE LAMB LIES DOWN ON BROADWAY』発表後、脱退する。(家族問題により)

その後、代役としてドラマーのフィル・コリンズがヴォーカリストへ転身という離れ業をやってのけ、(ゲイブリエルと声質も似ていた)ゲイブリエル脱退危機を乗り越えるが、またしても1977年ジェネシスの幻想性を作り出す重要人物スティーヴ・ハケットが『SECONDS OUT』発表後、脱退しジェネシスは岐路に立たされる。

その後、3人になり活動を続けていくことになるのだが、これがまたしても彼等の歴史にないほどの大当たり。ポップ・フィールドにおいて一躍ジェネシスという名が広まる。世界的なヒットを飛ばしながら、ジェネシスは世界的なスーパー・グループに変貌を遂げ、現在はソロ活動を中心に活躍中。

人生何が起こるか全く分からない、とはジェネシスのためにある言葉と言っても良い。ちなみに、1975年に脱退したピーター・ゲイブリエルもソロ活動において彼が在籍していた頃のジェネシス以上の成功を収めた。

MENU               BACK

なんかこうやって彼等のバイオグラフィを書くだけで、憂鬱になってしまいますね。他人の波乱万丈の成功人生を書くってことほど虚しいもんはない!馬鹿野郎!・・・・・。

一応、ゲイブリエル在籍時のジェネシス、ハケットが抜けるまでのジェネシスをプログレ期と見なします。その後のジェネシスはあまり詳しくないのですが、THREE SIDES LIVEは結構良かったです。
ここでは、もちろんプログレ期のジェネシスを取り上げるわけなんですが、非常にエキセントリックかつシアトリカル。ゲイブリエルのこの時期特有の文学性を帯びた超難解な詩。それでいて非常に英国らしい残虐性。現在はシンフォ・ロックの枠に入れられそうな音楽なんですけれど、結構食わず嫌いな方が多いように思えます。聴かず嫌いの方はとりあえず、怪奇骨董音楽箱、フォックストロットを聴いてみて下さい。ジェネシス初心者の方は、月影の騎士(selling england by the pound)が一番聴きやすかったりしてお薦めです。ロック・オペラでもある『眩惑のブロードウェイ』はそれらの作品を聴いた後聴くのがよろしいかと思われます。アルバムは簡単に入手できると思われます。

 

FOXTROT

TONY BANKS -organ,melltron,piano,electric piano,12-string,voices
STEVE
 HACKETT -electric guitar,12-string and 6-string solos
PHIL
 COLLINS -drums,voices,assorted percussion
PETER
 GABRIEL -lead voice,flute,bass drum,tambourine,oboe
MICHAEL
 RUTHERFORD -bass,bass pedals,12-string guitar,voices,cello
PRODUCED
 by DAVID HITCHCOCK
1972年発表の4thアルバム、フォックストロット。
前作『NERSURY CRYME』の路線を、さらに完成させた一枚。(それを示すのが、ポール・ホワイトヘッドの残虐この上ないジャケットだろう。なんとこのジャケットの中に前作が・・)

今や、プログレッシヴ・ロックの名盤中の名盤でもあるこの1枚は、ピーター・ゲイブリエルの個性、そしてそれを支えるメンバーの力量を思い知らされる珠玉の一枚である。特に最終曲サパーズ・レディはプログレを代表する名曲であり、あまりにも影響力が大きいのでこういう構成がプログレであると言う妙な因果をも生んだ。(フォロアー続出。)
今作において、ピーター・ゲイブリエルのシュール・レアリスム的ユーモア、悪意だらけの残虐性を帯びた詩、寅話的なシアトリカル性が完成された。またスティーヴ・ハケットのソロ作『
Voyage of the Acolyte』(侍祭の旅)もこの作品が好きなら必聴である。

M1,WATCHER OF THE SKIES,天空の見張り人。(クリムゾンから譲り受けた)メロトロンの鋼鉄をも切り裂く響き。個人的にこれはプログレきってのメロトロン・ソング。展開はジェネシスにしてはシンプルでこれはもちろん序の口。リズムが頭から離れない。
M2,TIME
 TABLE,分かりやすいメロディに、哲学的な問いを孕んだ詩。哀愁たっぷりに歌い上げるゲイブリエルの歌唱と虚無感がなんとも言えない。
M3,GET'EM
 OUT BY FRIDAY,彼らのシアトリカル・ソングの代表曲。悪徳不動産を訴える内容。ゲイブリエルが声を使いわけて、これでもかとばかりに攻撃的。ユーモアと非常に悪意的な批判が混ざった演劇デスマッチ。
M4,CAN-UTILITY
 AND THE COASTLINERS,とりあえず、歌詞の世界を想像すると怖くなってしまうが、展開はジェネシスらしい感動的で物語性豊かなもの。ハケットのアコースティック・ギターとメロトロンが織り成す中盤の悲愴感漂うアンサンブルは身震いする。
M5,HORIZONS,
ハケットの美しいアコースティック・ギター・ソロ小品。次曲の前奏と言った感が強いが、うーん、この美しさは言葉がない。ただただ身を任せるのみ。
M6,SUPPER'S
 READY
@ LOVER'S LEAP
A THE GUARANTEED ETERNAL SANCTUARY MAN
B IKHNATON AND ITSACON AND THEIR BAND OF MERRY MEN
C HOW DARE I BE SO BEAUTIFUL?
X WILLOW FARM
E APOCALYPSE IN 9/8co-starring the delious talents of gabble ratchet
F 
AS SURE AS EGGS IS EGGSAching Men's Feet
構成一つとっても唯一無二だろう。とりあえず、構成を覚えるまで聴き込んでからが、この曲との勝負である。歌詞はこれまたゲイブリエル特有の難解さが極まった感が強く、話が大きすぎてなかなか理解できない。最後にはヨハネの黙示禄まで登場する。
7つのヴォーカル・パートに分かれてるが、とりあえず、どの部分も愛らしさと奇怪な部分がごっちゃ混ぜで、驚嘆するしかない。最後のエンディングを向かえる瞬間は鳥肌もの。フェード・アウトして終わるのが勿体ないくらい。クライマックスの応酬。
音楽版『マザーグース』。
結構ヴァラエティに富んではいるのだが、『残虐的』という共通点がどの曲にも見え隠れする。(M5除く)歌詞の世界を想像してみましょう。良い体験が出きるかもしれません。若き日のゲイブリエルの世界観がこれだったとしたら末恐ろしいが、この世界観ははっきり言って唯一無二。
またピーター・ゲイブリエルの残虐的世界観が表出しがちだが、他のメンバーのプレイも見事というほかない。インスト部分にこそ魅力を感じる人もいるだろう。(歌詞なんか対訳を読まなければほとんど聞き取れないし。。)

この作品が彼等の最高傑作ということに異論は全くない。が、最初に聞くには微妙かもしれない。前作や次作で慣らしてからこの作品に入るのが良いかもしれない。

 

SELLING ENGLAND
 
BY THE POUND

PHIL COLLINS -drums,percussion,vocal
MICHAEL
 RUTHERFORD -12-string bass,electric sitar
STEPHEN
 HACKETT -electric guitar,nylon guitar
TONY
 BANKS -keyboards,12-string
PETER
 GABRIEL -vocals,flute,oboe,percussion
PRODUCED
 by JOHN BURNS/GENESIS
1973年発表の6thアルバム。(日本では1974年発売) 当時の邦題:月影の騎士
原題訳は『大英帝国£で切り売りします』と言う非常に大胆かつ皮肉的なもの。
前作『FOXTROT』のSUPPERS READYにおいて、ゲイブリエル主導による構成も、何もかもまさしくプログレという超大作を作った反動からか、今作は全メンバーが均等に作品に関っているように思える出来である。大変馴染み易いメロディに、展開、そしてなによりドラマティックなのだ。そのためか、ジェネシス特有の(寧ろゲイブリエル特有か)怪奇趣味は控えめに、全体的にロマン溢れる柔らかい作風になっている。

場所は現代のイングランド。それでもゲイブリエル特有のギャング抗争を寸劇のように仕立て上げるシアトリカル性もあるし、相変わらず良く分からない詩も多々あって、プログレからポップに移ったのではなく、あくまでフィールドはプログレ、そこでこのような作品に挑戦したのである。

M1,DANCING WITH THE MOONLIGHT KNIGHT (月影の騎士),うーん。胸を締め付けられるようなメロディ・ラインですね。なんだか現代においても通じるような批判が歌詞に散らばっている。とにかく、アンサンブルが脅威。静と動のコントラスト、パワフルなドラミング、物語性のあるシンセ。スピード感も抜群。文句の付け所がない。
M2,I KNOW WHAT I LIKEIN YOUR WARDROBE,歌詞はジャケットの絵のことを書いているらしい。妙に明るさが漂うジェネシスのヒット・シングル。好きなものは分かってるし、分かってるものは好きだ、という詩が頭から離れない。
M3,FIRTH
 OF FIFTH,彼らの代表曲。リリカルなピアノの調べとともに、大々的に始まる。ハケットの優雅かつ憂いを滲ませたギタープレイ。中盤のゲイブリエルのフルート。その後のインスト部分はファンタジー性も豊かに絶妙のアンサンブル。たまらない1曲だろう。
M4,MORE
 FOOL MEVOCALS PHIL,アコースティックな小曲。フィル・コリンズがヴォーカルを取っていて、何も分からずに聴くとゲイブリエルと区別がつかないままという・・・でもやっぱり線が薄いかな。曲としては美しいです。
M5,THE
 BATTLE OF EPPING FOREST (エピング森の戦い),これぞゲイブリエル真骨頂の大作。時は現代ながら、ある二つのギャング抗争を寸劇仕立てにゲイブリエル一人で芝居しています。はっきり言って英語は聞き取れないし、歌詞を読んでみても一向に謎が増すという『らしい』ストーリー・テリング。うーん、と思ってもしょうがない。演奏はこれまた緻密なアンサンブルの応酬で見事というほかないし、ゲイブリエルのヴォーカル一つとっても手のこんだ歌い分けが成されている。
M6,AFTER
 THE ORDEAL,非常に繊細なピアノ、アコースティック・ギターがなんとも言えない美しさを醸しだし、これぞアンサンブルの妙としか言いようがないほど気品の高さがあり、後半のギターソロも思わずお涙ホロリ。
M7,THE
 CINEMA SHOW,ジェネシスの中でも1,2を争うほど好きな曲で、この構成には溜息が出ます。ほんのりとしたファンタジー・テイストを孕み、優美に哀しく最初のヴォーカル部分は進行。インスト部分は言わずもなが、贅沢極まりないほどのドラマ性を帯びながら、トニー・バンクスのキーボード、フィル・コリンズのドラミングは凄いの一言。セカンズ・アウトにてツイン・ドラムが聴けるのでそれも必聴。
M8,AISLE
 OF PLENTY,前曲とクロス・フェードしながら入り込んでくる。月影の騎士のリプライズであり、なんだかアルバムのラストという感じの感動的な終わりなのだが、歌詞でズッコケル。
牛あばら肉ー
1ポンドあたり47ペンスに値下げだよ!とかアンカーバターがいくらとか、ゼリーがいくらとか、締めは『ITS SCRAMBLED EGG』。
私自身非常に大好きな盤で、最初聴いた時は1曲目のゲイブリエルの歌唱に感動した。そして、なんと言ってもシネマ・ショウだろう。風景が切り替わるようなインストへの流れは今聴いても感動的だし、トニー・バンクスの面目躍如たるキーボード・プレイも必聴だ。もちろん、その他の曲も素晴らしく、ジェネシスの中でも代表作であると同時に最高傑作との声が聞かれるも頷ける大名盤だ。

プログレの中においても、シンフォニックという分野は現在かなり酷い扱いを受けているように思うが、馬鹿の一つ覚えのようにシンフォニックの何処がプログレッシヴなんだ、と言うよりその作品に感動するか、しないかで良いじゃないか。私は今聴いてもこの作品が刺激的だし、決して安売りシンフォニックでないところがジェネシスであり、シンフォニックの言葉で収まりきらない奥の深さこそがジェネシスなのである。

 

 

 

MENU            BACK