CAN

フルクサス、ラ・モンテ・ヤング、スティーヴ・ライヒ等と交流していた現代音楽家、イルミン・シュミットを中心に、シュトック・ハウゼンに師事していた元ジャズ・ベーシストのホルガー・シューカイ、フリー・ジャズでならした凄腕ドラマー、ヤキ・リーベツァイト、シューカイが開いていた音楽教室の生徒であったミヒャエル・カローリ(直接の生徒ではない)が集まり、1968年頃、CAN結成。

彼等は4人でセッションを繰り返しながら活動する。そして、黒人画家で音楽的にはド素人であったマルコム・ムーニーがヴォーカリストとして加入。時期は不明ながらアメリカ人のデヴィッド・ジョンソン(フルート奏者、テープ・エフェクト)が加入し、すぐさま脱退している。
1969年に1stアルバム「MONSTER MOVIE」を発表する。
その後、ムーニーの精神が破綻し脱退へ、彼等は新たなヴォーカリストを再び探すことになる。
1970年頃、彼等は街中で放浪中のダモ鈴木を発見、何故か知らないがメンバーへ。
当時彼等は映画用のサウンドトラックを多数手掛けていて、ダモが加入してからもしばらく続く。
19709月、これらの映画用サントラを編集し「SOUNDTRACKS」を発表。
1971年に「TAGO MAGO」を発表。
1972年に「EGE BAMYASI」を発表。
1973年に「FUTURE DAYS」を発表。
この後、ダモ鈴木は『あまりにも完成しすぎた』という理由により脱退。または叫びながらスタジオを飛び出して行ったきり戻ってこなかった、エホバの証人に入信した、等の逸話も多し。

その後も、残った4人は新たにヴォーカリストを探そうとセッションを繰り返すが結局見つからず断念、彼等自身がヴォーカルを担当しながらインスト主体のアルバム作りへ。

197410月これまでの録音の未発表曲を主に編集した限定ベスト「LIMITED EDITION」を発表。
同年
12月、新作として「SOON OVER BABALUMA」を発表。
1975年に「LANDED」を発表。
1976年に「LIMITED〜」にさらに曲数を追加して2枚組として発表されたベスト「UNLIMITED EDITION」を発表。
同年に「
FLOW MOTION」を発表。(さらに同年にイギリス・ベスト版「OPENER」を発表)
1977年に「SAW DELIGHT」を発表。(元トラフィックのベーシスト、ロスコー・ジーが加入、さらにリーボップ・クワク・バーも加入し、シューカイはサウンド・エフェクトを主に担当)
1978年「OUT OF REACH」を発表。(シューカイが脱退)
1979年に「CAN」を発表し、緊張感が無くなった、と彼等は解散する。

1989年にまさかの再結成「RITE TIME」を発表。(マルコム・ムーニー復帰作品)
その他、編集版、ベスト版、ライブ等もあり。
詳しくは
公式HPを参考に!
ダモ鈴木氏公式
HP,蛇毛'sネットワーク(http://www.damosuzuki.de/

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ジャーマン・プログレ=CANという方程式が成り立つぐらいに偉大なグループです。
プログレに拘らずとも様々なジャンルからアクセス可能である、という事も彼等の功績を称えていますよね。まさしく、聴かなければいけない存在。

一般的に、ダモ期が有名ですが、それ以外もかなりお薦めです。個人的にはダモ期は勿論のこと、ダモがいないSOON OVER BABALUMAが好きです。ホルガー・シューカイのソロも是非とも聴いて下さい。
とりあえず、
CANならば「EGE BAMYASI」,「FUTURE DAYS」。シューカイのソロなら圧倒的に「MOVIES」、次点「FULL CIRCLE」。というか全部知りませんけどね。
MUTE盤の値上がりが著しい昨今、早めに買っておいたほうがよいです。そのうち、3000円とかになりそうな勢いです。

 

CANの作品のREVIEWは全作品書き直し中です。
しばしお待ちを・・。
過去の文章は↓の方にありますが、あんまり見ないでくだされ

 

 

HOLGER CZUKAY

CANのベーシスト、ホルガー・シューカイ
1938324日誕生、1960年頃ジャズ・バンドにて活動を開始、レコーディングも始める。
19631966年頃、現代音楽家シュトック・ハウゼンに師事する。
1968年頃、CAN結成、また1968年に自身のファースト・ソロ「CANAXIS」を発表。
以下略、、、
& 簡単にディスコグラフィ。

1968年 「CANAXIS
1979年 「MOVIES
1981年 「ON THE WAY TO THE PEAK OF NORMAL
1984年 「THE EAST IS RED
1985年 「FULL CIRCLE」 リーベツァイト、ジャー・ウォブルとのコラボ)
1987年 「ROME REMAINS ROME
1991年 「RADIO WAVE SURFER
1993年 「MOVING PICTURES
1999年 「GOOD MORNING STORY
2000年 「LA LUNA
200?年 「TIME AND TIDE
200?年 「LINEAR CITY
200?年 「THE NEW MILLENNIUM
その他、
PHEW、デイヴィッド・シルヴィアンを始め、コラボ作品多数。現在も活動中。
詳しくは
公式HPをご参考あれ!

 

MOVIES

HOLGER CZUKAY -words,vocals,guitar,keyboard+synthesizer,short waves,bass
JAKI
 LIEBEZEIT -drums,congas
MICHAEL
 KAROLI -guitar on M2
IRMIN
 SCHMIDT -grandpiano on M2
REEBOP
 KWAKU BAAH -chicken organ on M1

COMPOSED,RECORDED,MIXED,EDITED
 AND PRODUCED BY HOLGER CZUKAY,ADVICED BY CONNY PLANK
1979年発表のホルガー・シューカイ単独名義では2nd。
CANも解散し、彼等はそれぞれの活動を行っていくが、ここではCANのメンバーが総出で参加。コニー・プランクを交えての録音だが、ほとんどホルガー一人の独壇場と言っていい。
バンド解散後のメンバー・ソロにありがちな自己満足の極みのようなものでは断じてなく、アヴァンギャルドで実験的、ほんのりポップなCANの一連のアルバムにも勝るとも劣らない超傑作アルバムだ。特にM3では、シューカイが短波放送で偶然聞いた中近東の女性の歌(コーラン朗読?)のようなものを録音し、そして編集し(彼は編集魔)、それをコラージュしたもので(もちろん全部アナログの手作業)当時大ヒットしたそうな(映画や日本のCMにも使われていた模様)。このコーランを読んだような歌とバックの演奏が不思議な浮遊感を醸し出していてとても素敵な気分になれる。
とりあえず、彼の作る音の波(M2のシンセ等)が圧巻で、またCANイディオムを受け継いだ心地良さも健在の至福感溢れる大傑作アルバムだ。・・・が、この縮小ジャケはなんとかして欲しいです、ホルガーさん。
M1,COOL IN THE POOL
M2,OH
 LORD GIVE US MORE MONEY
M3,PERSIAN
 LOVE
M4,HOLLYWOOD
 SYMPHONY
初めてこの音を聴いた時、クリムゾンのディシプリンを初めて聴いた時のような感覚を覚えた。エスニックさもCAN(SOON OVER〜辺りから)の続きと言われれば続きなのかもしれないが、多分ニューウェイヴのプログレ的解釈なのかな、と(CANでもある意味ニューウェイヴの予見と言えたが)。
表向きはポップで人懐っこいアレンジが施されているが、注意深く耳を傾けてみると様々なエフェクトが聴く回数を重ねる毎に新たな顔を出すように表れ、奥の深さは底がない井戸を思わせるほどだ。
聴くともなしに流し聞きできたり(寝ることもできたり)、真剣に対峙すればそれこそプログレ的であるというこの凝り様、今では私の生活に欠かせないアルバムになっている。
余裕すら感じられ、100回聴けば1000回は聴きたい気分にさせてくれる重層的な傑作だ。

飽きが来て置き忘れ去られるような"名盤"こそ数あれど、聴くたびに心の中で変化していくようなアルバムは作ろうと思って作れるものじゃないと思う。多分音楽の才能でも無理だろう。それこそがまさしくマジックで、シューカイがこの短波放送を偶然に拾えたような好運が全てを物語っているような気がしてならない。

 

 

 

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MONSTER MOVIE

マルコム・ムーニー在籍のデビュー・アルバム。
マルコム・ムーニーの黒い唸り声のような比類なきヴォーカリゼーションが終始圧巻。
特に、B面の大曲YOU DOO RIGHTでのまさに念仏を唱えるかのごとくの歌は
病み付きになること間違いなし。と同時に非常に危険な歌でもある。

PLEASE WAIT!


DELAY 1968

1981年に出たアウトテイク集。なのだが、実質、裏モンスタームーヴィーと呼ばれる
単なるアウトテイク集ではない一枚。
マルコム・ムーニーのヴォーカルにハマッた人ならこれももちろん必須。

PLEASE WAIT!


SOUNDTRACKS

HOLGER CZUKAY -bass
MICHAEL KAROLI -guitar
JAKI LIEBEZEIT -drums
IRMIN SCHMIDT -keyboards
DAMO SUZUKI -vocals on tracks 1,2,4,6
MLCOLM MOONEY -vocals on tracks 5,7

1970年の2nd。その名の通り、サウンドトラック集。様々な映画で使われた曲を
集めたもので、やはり統一感はないが、逆にマルコム、ダモ両名のヴォーカルが聴けたり、
ヴァラエティに富む曲群等、これはこれでおいしい作品なのだ。

M1,DEADLOCK、カローリのギターがブルージーに咽び泣くように鳴り続ける。
ダモのロックっぽいヴォーカルも格好良いが、なんと言ってもカローリのギターだろう。
ひたすら泣いてます。
M2,TANGO WHISKEYMAN、なんと歌謡曲である。60'sガールズ・ポップに
使われていそうな曲調に、ダモの囁きヴォーカルが乗り、カローリらしいへなへななギターが格好良い。
間奏ではCANらしいインストが聴ける。どういう映画の場面で使われているのか興味がある。
M3,DEADLOCK、M1のインスト・ヴァージョン。M4、DON'T TURN THE LIGHT ON, LEAVE ME ALONE
サイケデリックなギターとフルートがかなり怪しい。ダモの囁きヴォーカルも相まってやけに地下録音のような
匂いがする。中毒性もあり、非常に格好良い好曲。
M5、SOUL DESERT、マルコムがヴォーカルを取っている。
打って変わって空気が変わり、磁力が発生している。このマルコムのヴォーカルも実に不思議な魅力があり
引き寄せられるのだ。ヘタウマ感がなんとも言えない。最高!
M6、MOTHER SKY、このアルバムの白眉とも言えそうな曲である。14分の大曲。
カローリのロック然としたギター・ソロがまず疾走する。ハード・ロックとも言えそうだ。しかし、
それとは逆にシューカイの怪しいベースは呪術的、ダモは囁きながらと、お互い自己主張をする。
中盤、後半にはヤキのドラムも爆発。ペラペラなサウンドが逆に怪しさ、アンダーグラウンド風味増殖。名曲。
M7、SHE BRINGS THE RAIN、マルコムがヴォーカルを取ったかなりジャジーで
シンプルなバラード。ややオシャレ風味で、ユーモアラスなナンバー。

一つ一つの作品に各メンバーの音楽的背景等が垣間見られる。色々な曲に
挑戦しようとする実験なのか。アンダーグラウンドな匂いがプンプンとし、それでいて良質の
CANミュージック。これもやはり聞き逃せない。


TAGO MAGO

HOLGER CZUKAY -bass   MICHAEL KAROLI -guitar
JAKI LIEBEZEIT -drums    IRMIN SCHMIDT -keyboards
DAMO SUZUKI -vocals

1971年発表3rd。今作がダモ加入後、事実上の1stアルバム。アナログ2枚組みの大作。(CDは一枚)
リズム隊は凄まじい演奏、フロントはフリーキーというCANのイメージがそのまま
出ているようなアルバムで、CAN絶頂期を体験できる至福の一枚だ。

M1、PAPERHOUSEは、ブルーズを基調とした曲調で、かなり聴きやすい部類ではないだろうか?
何処かしんどそうに歌うダモのヴォーカルと哀愁すら感じさせるような演奏でCANでは珍しいバラード調の曲。
途中、ヤキのドラムが加速し、カローリのギターが絡み、ダモ独特の呟くように叫ぶヴォーカル。格好良いの一言。
1曲目の盛り上がりから続くように
M2、MUSHROOM
いきなりダモのヴォーカルがトーン・ダウン。この冷めた感じが胡散臭くなく心地良い。
ヤキの静かで反復するドラミングが高揚させる。素晴らしい曲だ。シューカイによるSE,コラージュから

M3,OH YEAH
に繋がる。呪文のようにダモが歌い、バックは次第にヒートアップする。
ダモがメロディーを歌い始めるのだが、これは意味不明な日本語の歌で有名。イルミン・シュミットの浮遊感を増幅させる
キーボードももちろん忘れてはならない。この曲もスピード感抜群である。
B面の大作
M4、HALLELUWAH。ヤキとシューカイの屈強な反復ビートが永遠の如く繰り返され
トリップしそうになる。ブレイクを挟み、再び反復ビートへ。カローリのノイジーなギターが
絡む。再びダモが呟き始め、絶叫する。ここの盛り上がりはこのアルバムのハイライトだろう。
カローリのギターソロが続き、ヤキのドラミングもさらに熱を帯びる。あくまで反復ビートで。
イルミン・シュミットのキーボードもアグレッシヴに加わり、ヤキのドラムもさらに呼応するかのように激しくなる。
凄まじい曲だ。
M5,AUMGNは打って変わってコラージュ音から始まる。
ノイズも混ざり、混沌とする。民族系の音も混ざるが、全体的にはアンビエントな作りになっているのが特徴。
イルミン・シュミットの貞子のようなヴォーカル(笑)がますますカオス状態を生み出す。
金属音、パーカッションが主張せず(?)怪しさを助長。後半は思いっきり主張したパーカッションの乱打。
犬が鳴いたりもする(笑)。パーカッションの乱打が次第に民族色の強いものへと移って行き終焉する。
M6、PEKING Oは、ダモの宗教儀式のような叫びにノイズ、パーカッションが被さり次第に曲らしく
なっていく。現代音楽的な突拍子もないピアノや打ち込みのような高速ビート、ダモは相変わらず
怪しく呟いたり、叫んだり、笑ったり、意味不明な言葉を吐き出し、ノイジーに展開する非常に面白い曲だ。
M7、BRING ME COFFEE OR TEAは前の2曲と比べると曲になっており、聴きやすいだろう。
民族的なカローリのアコースティック・ギターとシューカイのベースが非常に格好良い。ここでも
ヤキの超高速ドラミングに耳がゆく。凄まじい演奏だ。

アナログ1枚目はガレージっぽい曲群が並んでいるのに対し、2枚目はノイズ、集団即興がまぶされた
インダストリアル〜ノイズの先駆的な曲が多い。どちらも非常に斬新で、今聴いてももちろん古びることはない。
問答無用、必聴!


EGE BAMYASI

    HOLGER CZUKAY -bass     
MICHAEL KAROLI -guitar
JAKI LIEBEZEIT -drums
IRMIN SCHMIDT -keyboards
DAMO SUZUKI -vocals

1972年発表の4th。前作をさらに洗練したようなポップな感覚がやや残る作品。
名曲だらけで、ヒット曲SPOONを含み非常に聴きやすい。
サウンド的には、TAGO MAGOからFUTURE DAYSの間とは簡単に言い切れない、独特の
ポップ感、浮遊感がある。が、どちらかと言えば、FUTURE DAYS寄りではある。

M1,PINCH、ヤキ・リーヴェツァイトの相変わらずの正確なドラムから始まり、ダモが
囁く。緊張感が溢れる演奏と、それでもフリーキーな感覚はやはり凄まじいものがある。
イルミン・シュミットのキーボードも主張することなく、カローリのギターとともに静かな音の洪水を感じる。
CANの代表曲。
M2,SING SWAN SONG、バラード調なのだが、もちろんしんみりしたりはせず、
ひたすら心地よい時間が流れる。とは言っても4分なのだが。水のようなSEも不思議な質感を感じさせる。
M3,ONE MORE NIGHT、非常に洗練されたポップな感覚が過ぎる。
全体的にループのような印象を受けるが、カローリの薄っぺらいギターがアクセントとなっている。
M4、VITAMIN C、これもヤキの正確なビートとともに、ダモが囁いたり、叫んだり。。
これも質感は非常にポップ。後半、イルミンのキーボードが響き、ややサイケっぽく感じられもする。
M5、SOUP、ノイズのスープ、音のスープという意味では、非常にCANらしい前作にも見受けられた
混沌とした実験曲。ダモが囁き(時には叫び)ながら、不思議な空間が流れる。音が全面に出るのではなく
何かカーテンに覆われているようなサウンドはやはり今作〜FUTURE DAYSの頃のものだ。
後半はダモのヴォイス含め混沌としたインプロ色全開。
M6, I'M SO GREEN、やたらと感じるスピード感、
リズム感、フレキシブル感、ポップ感、それでもCANらしいと思えるのが凄いところ。格好良い。
M7、SPOONは当時5万枚(?)の売上を記録し、CANの中でも有名な曲だろう。
これまでと同様、ポップに展開するが、幾分か"流れ"が存在する。(これまでの曲はどちらかと言うと反復系)

とりあえず、CANを聴くならこれから入るのが良いかもしれない。
ポップな感覚とは裏腹に、奥の深さはCANだけが成せる業のようなもので
聴けば聴くほど味が出るようなアルバムだろう。必聴!


FUTURE DAYS

HOLGER CZUKAY -bass
MICHAEL KAROLI -guitar
JAKI LIEBEZEIT -drums
IRMIN SCHMIDT -keyboards
DAMO SUZUKI -vocals

1973年発表の5th。一般的には最高傑作と言われている所以は、やはりこの
完成度だろう。CANとは、アナーキー集団であった。だが、ここでは非常に構築的な
創造が見受けられる。どこか、ゆる〜い感覚だったり、浮遊感であったりはもちろん感じるのだが、
前作EGE BAMYASI で感じられた洗練性がさらにここでは推し進められ、無機質な
リズムはここで完成を見る。よって、ニューウェイヴ(ノーウェイヴ)からテクノ、エレクトロニカ方面にまで
こぞってこのアルバムが持ち上げられることとなる。深いカーテンに覆われたように
奥の方で音が鳴り響く感覚がするのは前作からの続きのようで、流し聞きをしても心地よく、真剣に聴いたら
凄まじいという、まさしくモンスター・アルバムなのだ。

M1、FUTURE DAYSは、これ以上の至福、浮遊感はあるのだろうか、と思うぐらいに気持ちいい。
ヤキのリズムがフェード・インしてくると同時に、霧雨が降ってくるような感覚に陥る。
濃くないラテン風味なリズム、前作から受け継がれるポップ感覚、各メンバーが自己主張せずに完成させている。
M2,SPRAY、様々なリズムが一体となってゆっくりと襲いかかる。シューカイのベースが踊り、
イルミン・シュミットのオルガンが不思議なタイム感覚で入り、相変わらずの凄まじい高速ドラミングが牽引する。
インプロ度もやや高め。ダモのゆるーいヴォーカルはいつも通り。このヴォーカルと共に、カローリのギターが浮遊感を
さらに上げる。
M3、MOONSHAKE,やや硬質なリズムとともにポップなメロディが疾走する。様々なSEが
色をつける。非常に格好良い曲だ。
M4,BEL AIR、20分の大曲。美しいオープニングでダモのポップなメロディが静かに絡まる。
シンセ音が非常にアンビエントな空間を作り、独特の浮遊感、霧に包まれる感覚になる。カローリの
海の奥底を漂うようなギター・ワークがさらに心地よく絡まる。次第にリズムが早くなるが、全く気にならないのが凄いところ。
20分なのだが、もっと聴きたいと思わせる曲だ。

CANの浮遊感、アンビエント色がどちらも最高の形で完成されている、まさしく完成品。
前作までにあったような混沌としたインプロはもはや聴かれないが、頂点を感じさせるアルバムだろう。
しかし、この完成度からダモが脱退する事となり、完成との引き換えというそれなりの代償がつくのである。
この盤にも見られるエスニック感は、次作でさらに推し進められることとなる。
是非大音量で。全人類必聴!


LIMITED EDITION

限定盤。68年〜74年までの未発表テイク等を収めた
ベスト盤。後に、UNLIMITED EDITIONとして2枚組みにヴォリューム・アップして
出されている。


SOON OVER BABALUMA

HOLGER CZUKAY -bass
MICHAEL KAROLI -guitar,violin,vocals on 1,4,
JAKI LIEBEZEIT -drums, percussion
IRMIN SCHMIDT -keyboards,vocals on 2

1974年発表。ダモ鈴木が脱退し、その後残ったメンバーは後任のヴォーカリストを探すが、
納得できるヴォーカリストは見つからず、彼らの中でヴォーカルを担うという事になった。

M1、DIZZY DIZZYは、エスニック色(アフリカ、中国?)が強く、ミヒャエル・カローリが呟くように
声でリズムを刻む。カローリによるヴァイオリンも浮遊感溢れるもので、この曲をうまくリードしている。
ヴォーカルがうまく楽器のように作用しているのではないだろうか?
いい意味でダモ期とは違い、気にせず聴ける。(あくまでこの曲は。)
M2,COME STA,LA LUNAは、タンゴのリズムが印象的だ。この曲はイルミン・シュミットが
ヴォーカルを担当。永遠と持続するかのようなリズムが心地よい。突如現れるかのような現代音楽的なピアノも
印象的だ。不思議な曲。
M3、SPLASHは、今度はサンバのリズムを取り入れた曲で、クールで野性的というのが
最初聴いた時の感想。クールというのは、ヤキ・リーベツァイトの高速ドラムがあまりにも平然と
叩いているように感じられるので。  改めて凄いと思う、この人は。カローリのギターが
ドラムと共に疾走する。
M4,CHAIN REACTIONは、不穏なノイズと共に幕開け、ヤキの高速ドラム。
広大な大地を疾走するかのようなアフリカっぽいリズムが格好良い。
ロックと民族音楽のポリリズムが限りなく沸点に近いところで融合。
カローリのヴォーカルも乗り、再びポリリズミックに爆走する。展開も所々変わる。
後半はややインプロヴィゼーション中心。11分もあるが、飽きません。
M5,QUANTUM PHYSICSは前曲と続くように、クレジットはないが、カローリの呟きヴォーカルと
静かなリズム展開。空間を模索するかのようにアンビエントな空間が生まれてゆく。

このアルバムの評価は、ダモ後の方向性が定まらず模索してゆく通過点のような
ものがあるが、これはこれで素晴らしいアルバムだ。
というより、他のバンドのアルバムの質と比べれれば明らかにこのアルバムの方がプログレッシヴである。


LANDED

MICHAEL KAROLI -guitars,violin,id,vocals
JAKI LIEBEZEIT -drums,percussion,winds
HOLGER CZUKAY -bass,vocals on 1
IRMIN SCHMIDT -keyboards,alpha77,vocals on 1

1975年発表。邦題;闇の舞踏会。ユーモアラスなジャケットがまず目を惹く。
この作品が前作とは全く違った顔を見せる。

M1,FULL MOON ON THE HIGHWAY。いきなりロックンロール。
もはやダモ期の音は何処へやら、、と思う人もいるかもしれないが、これが実に格好良いのだ。
ノイジーなカローリのギターと、シンプルなヤキのドラム。シューカイの疾走するベース。
こんなCANも格好良いな、と思うのは私がリアルタイムで聴いていないからなのか・・
M2,HALF PAST ONEもどちらかと言うとロックありきな曲だが、イルミン・シュミットの
キーボードがロックだけの香りを漂わせない。カローリのヴォーカルも前作のダモの亡霊に
取り憑かれたヴォーカルと違い、力強い。というより呪術的。
M3、HUNTERS AND COLLECTORSもカローリのヴォーカルが引っ張るようなスタイルで
シューカイの重いベースが印象的だ。
グルーヴ感とはよそにイルミン・シュミットのキーボードも心地よさを引き出している。
M4,VERNAL EQUINOX、カローリの凄まじいギターワーク、ヤキの超高速正確無比なドラム。
凄まじいスピード感が脳内に襲いかかる。カローリのギターから、イルミン・シュミットのキーボードに
主権が移る。さらに展開がいきなり変わり、テクノ(?)のような場面も。
再びカローリに。もちろん終始ヤキのドラムは正確に高速に刻みつづける。開いた口が塞がらないとはこの事だ。
M5、RED HOT INDIANSは、タイトル通りインディアンのリズムを連想してしまう。
音は野性的なジャズ・ファンクのような音から始まり、民族的なリズムにカローリが呟く。
ジャズ・サックスも挿入され、実にファンキーになっている。新たな一面である。
M6、UNFINISHED、非常に実験的な曲だ。ノイズが様々な様相を呈し、白黒の画像が時折
カラフルになったり、戻ったり、というような印象。ピアノがメロディアスで不思議な空間を演出する。
展開が変わり、ノイズ、電子音、インプロヴィゼーション。何処かタンジェリン〜初期のような展開を想像してしまう。
独立した個々のノイズ(音)が、焦点を定めて集まってきてドラマチックに"一つ"となる。
後半の繋がりは、鳥肌ものである。

これまたCANの新たな一面というような作品で、初期が好きな人から敬遠される理由も頷ける。
そう言った先入観を除けば、素晴らしいアルバムであるのが分かるはず。必聴!!