Area |
イタリアのプログレッシヴ・ロック・バンド,アレア。 1972年に結成され、PFMと並んでイタリアのプログレ・シーンの代表格として君臨する。1973年にアルバム・デビューを果たし、1978年まで6枚のアルバムを残すが(event'76は除く)、翌年バンドの要、デメトリオ・ストラトスが白血病にて他界。迷走状態に陥り1980年に最後のアルバムを発表するも、活動停止状態に。(1997年に再結成) デメトリオ・ストラトスはエジプト生まれのギリシア人で、そのヴォーカル・パフォーマンスは紛れも無く唯一無二。サウンドの方も、地中海色濃厚のバルカン・ジャズ・ロック。まさしく、最強という言葉が当てはまる超個性派プログレッシヴ・バンドである。 |
私の中で常に重要なバンド。プログレの中ではTOP3くらいに余裕で入ります。 アレア聴かずしてプログレは語れない、とは誰も言っていないと思うけど、それぐらい重要なバンドです。とりあえず、1st,3rdあたりが入りやすいかと思います。多分デメトリオの声で好き嫌いが分かれるかなー(それほど個性的)と思いますが、この声にはまれば自動的に全作品聴くことになると思われます。 現在は、リマスターデジパック版がCRAMPSレーベルから流通していますが、これは良く見ると、『COPY PROTECT』と書いてあります。えっCCCDなの?と思ったんですけど、CDにはちゃんとCDDAのマークがあります。これは何なのでしょうか?まじで誰か教えて下さい。 とりあえず、そのデジパック版は詳細が不明なので手にするのは控えた方が良いかと。。(私は買っちゃいましたが;)でも安物コンポですが、音は良いです。 その他には、キング・インターナショナルから直輸入版使用の旧盤も出回っています。こちらは正真正銘のCDDAです。しかし、現在廃盤状態でして入手は結構困難かもしれません。6thの1978はレーベルも移籍したもので、CCCDではないのですが、これも入手困難です。(ユニオンやネット通販では比較的簡単に入手できます。)まだ持っていない方は今秋(2004年)アルカンジェロからリリース予定の紙ジャケ版を待って下さい。(値段はちょい高いですけど) |
ARBEIT MACHT FRIE |
DEMETRIO STRATOS -vocal,organ,percussion PATRIZIO FARISELLI -keyboards,piano PATRICK DJIVAS -bass,contarabass PAOLO TOFANI -guitar,sinthsizer,flute EDOUARD BUSNELLO -winds GIULIO CAPIOZZO -drums,percussion |
73年発表の1st。新興クランプス・レーベル第一弾。邦題:自由への叫び。 原題:労働は自由を呼ぶは、かのナチス・ドイツのユダヤ人収容所のスローガンでもあった。 邦題からも分かる通り、タイトル(原題)は強烈な皮肉だろう。彼等は政治色の強いグループであったが、それらを抜いて考えても全くその輝きは今の時代においても増すばかりである。 この作品は1作品目ということなのだが、その攻撃力は並大抵ではない。(初期衝動、政治要素の集合体) デビュー作で全曲に渡りこれほど凄まじいパワーが介在しているのは珍しい。 リスナー側にも体力を要す。そうでなければ持ち応えれないだろう。 |
M1,LUGLIO,AGOSTO,SETTEMBRE(nero)(7月、8月、9月(黒))。エジプト人女性の詩の朗読から始まる(愛する人よ)。この曲はイタリア学生運動のテーマとなる。バルカン諸国をまたにかけた凄まじいまでのジャズ・ロック。やはりデメトリオのヴォーカルが力強い。圧倒的なテンションとスピードで民族色濃厚のインプロヴィゼーションへ。 M2,ARBEIT MACHT FREI(自由への叫び)。ノイズっぽい各音が次第に形作られてゆく。ホーン・セクション主導の高速変態ジャズ・ロックへ。荒々しい地、サックスの息吹、唸るベース音、凄まじいアンサンブルだ。デメトリオのヴォーカルが絡めば唯一無比。 M3,CONSAPEVOLEZZA(自覚)。さらに高速な変拍子ジャズ・ロック。しかし、不気味な様相を呈しており面白い。デメトリオのヴォーカルも濃すぎる。呼吸が聞こえてくる。ムーディー(?)なサックス・ソロも一興。 M4,LA LABBRA DEL TEMPO(時間の唇)。サックスとヴォーカルが共に歌う。攻撃面ばかりではない静と動の共存。静のエレピ・ソロにも動が介在する。 M5,240 CHILOMETRI DA SMIME(スミルネから240キロ)。サックスが主導でリードし、(このテーマ部分は結構ポップだと思われる)エレピの音色も印象的。中盤インタープレイを挟み再びテーマへ帰結。インスト曲。 M6,L'ABBATTIMENTO DELLO ZEPPELIN(ツェッペリン号の崩壊)。怪しげなノイズ・インプロから今までの展開とは違い、ややストレスが溜まるかのような緊張感が逆に面白い。インプロヴィゼーションの妙。 |
それにしても、1曲目詩の朗読後、デメトリオが歌う声でノック・アウトされる。その時点で、全曲聴きとおす覚悟を問われるのである。前半の地中海濃厚変態アヴァン・ジャズ・ロックは言わばアレアのリトマス紙だ。 問答無用の傑作1st。必聴! |
CAUTION RADIATION AREA |
GIULIO CAPIOZZO -percussion,drums PATRIZIO FARISELLI -piano,electric piano,bass clarinet,synthsizer ARES TAVOLAZZI -accoustic bass,electric bass,trombone GIAMPAOLO TOFANI -guitar,synthsizer,flute DEMETRIO STRATOS -vocal,organ,cembalo,percussion |
74年発表の2nd。邦題:汚染地帯。 パトリック・ディヴァスがPFMへ移り制作された。前作とは違いインプロヴィゼーションに比重を置いた作りになり、ノイズ、電子音も塗されたりしている。 傑作に挟まれてか、かなり目立たないアルバムなのだが、紅い彗星を始め名曲が多くこれも絶対に聞き逃せない。 |
M1,COMETA ROSSA(紅い彗星)、この曲だけは前作の延長線上にあると言ってもおかしくない曲で、違和感は感じない。デメトリオの力強いヴォーカリゼーションと、圧倒的なバック・アンサンブルが疾走する。地中海音楽、ブルガリア民謡〜アラビア風味が混ざり合った代表曲。 M2,ZYG(Cresctia Zero)(ゼロ成長)、電子ノイズがリズムを刻む。一気に疾走するアンサンブルへ。スピード感抜群。緊張感が常に溢れ聴く者を全く開きさせない、凄まじい曲だ。身震いします。聴く限りインストゥルメンタルなのだが、対訳が載せられてるのは何故だろう? M3,BRUJO(妖術師)、疾走感と共に混沌としたアンサンブルが繰り広げられる。そのアンサンブルが崩れ落ち、一気にフリー・インプロへ。デメトリオのヴォイスも呪術的で不気味だ。電子音がそれに絡みつく。電子ノイズ+壮絶な即興演奏が織り成す混沌とした実験曲。 M4,MIRAGE?MIRAGE(蜃気楼)、お経のような怪しいヴォイスが地の底で鳴り響く。シンセ、SE、電子音、打楽器等が絡みあいながらフリーキーに。全編フリー・インプロヴィゼーション。 M5,LOBOTOMIA(ロボトニー)、耳をつんざくような電子ノイズに覆われている。 |
前半のバンド・アンサンブルを重視したプレイと後半の圧倒的フリーキーな実験曲に分かれる。後に繋がるような実験曲が多く、1stに比べると圧倒的にデメトリオのヴォーカルが少ないのも特徴だ。 後半はどちらかと言えばジャーマン・プログレの手法か。とりあえず、万人受けはしないだろう。 だが、前半だけのために買っても後悔はしない。私はゼロ成長が大変お気に入りです。 |
CRAC! |
GIULIO CAPIOZZO -drums,percussion,vocals PATRIZIO FARISELLI -piano,electric piano,bass clarinet,synthsizer,percussion ARES TAVOLAZZI -bass,electric bass,trombone PAOLO TOFANI -guitar,synthsizer,flute DEMETRIO STRATOS -vocal,organ,cembalo,steel drum,percussion |
1975年発表の3rd。 相変わらずの地中海色濃厚な傑作サード。前作に見られた過剰な実験精神は見事に今作にも使われ、前作ほどあからさまでない分、非常に見事にブレンドされている。 1stからの道程はこの3rdで完成を見たと言ってよいだろう。全てにおいてパワーが漲っている。 |
M1,L'ELEFANTE BIANCO(白い象)、いきなりアレア節全開の地中海ジャズ・ロック。ピアノとデメトリオのヴォーカルが疾走する。アンサンブルも凄まじく、アレアのエスニック・ジャズ・ロックの総決算のような曲。 M2,LA MELA DI ODESSA(オデッサのリンゴ)、アレアの代表曲。(アレアツィオーネ必聴!)電子音、シンセ等のノイズが入り混じりながら民族色の強いドラミングが襲う。次第にアンサンブルになってゆく(ベースが唸りまくる)。リズムが交代し、ややご機嫌なリズムとデメトリオのセリフ調のヴォーカル。序盤から後半に渡って凄まじく格好良い展開だ。 M3,MEGALOPOLI(巨大都市)、電子音が平坦に怪しくデメトリオのスキャットを彩る。高速リズムが導入され、スピード感はそのままに地中海色濃厚なアンサンブルへ。デメトリオのスキャットが濃い。各ソロ・バトルを繰り広げながら進行してゆく。ライブとか凄そう。 M4,NERVI SCOPERTI(神経探索)、不気味なイントロダクション。テーマ部分のユニゾンが終われば、各人ソロへ。小爆発を至るところで繰り広げながら進行してゆく、と言ったような感じだ。凄まじい演奏だ。 M5,GIOIA E RIVOLUZIONE(歓喜と革命)、ピアノが流れるようにオープニングを刻めば、デメトリオの色濃い歌が鳴り響く。フォーク・タッチの展開に驚く。アンサンブルへ雪崩れ込んでも、ポップな感覚があり、楽しげな雰囲気だ。アレアにしてみれば異色かも。 M6,IMPLOSION(破裂)、打って変わって不気味なノイズに覆われる。穏やかなアンサンブルへと(ドラムは激しい)移ってゆく。気がつけばいつの間にか爆発的な演奏になっている。 M7,AREA 5(アレア5)、無茶苦茶(?)な即興。デメトリオのふざけたような掛け声ヴォーカルとピアノ・インプロ等が無茶苦茶に入り乱れる。小曲。 |
1st、2ndの要素が見事にブレンドされており、そのバランス感覚が非常に絶妙だ。全編に渡って凄まじいまでのパワーを感じることができるだろう。インプロヴィゼーションもアレアらしさが充分詰まっていて、聴いているとこちらまで気分が高揚する。1st、6thと並んでアレアの代表作で、今作を一番愛聴している、という人は多いだろう。やっぱり外せない傑作。必聴!! |
ARE(A)ZIONE |
GIULIO CAPIOZZO -percussion,drums,slingerland PATRIZIO FARISELLI -piano elettrico,piano acustico,clarinetto basso,percussioni,sintetiz zatore A.R.P DEMETRIO STRATOS -voce,organo,steel drums,percussioni ARES TAVOLAZZI -basso elettrica,basso acustica,trombone,pocket trumpet PAOLO TOFANI -chitarra elettrica,sintentiz zatori E.M.S |
1975年発表の4th。ライブ・アルバム『アレアツィオーネ』 アレアが1975年に行ったミラノ『若き労働者の祭典』、ナポリ『ルニタ祭』、リミーニ『若者の祭り』、レッジョ・エミリアのコムナレ劇場でのライブから選ばれたもの。 全てイタリア共産党主催のライブに出演している模様。ジャケを見ても、何だかウッドストックのような祝祭感がある。彼等の政治主義はもはや今の時代形骸化してしまったが、彼等のそれに対する熱気、気合の入れ様が窺い知れる。 もちろん、今の時代から見れば彼等の演奏に注目せざる得ないことに時代を感じてしまう。しかし、彼等の演奏は何回も書いて申し訳ないが、現代においても、そしてこれからの未来においても唯一無二のものであると断言できる強力なものだ。 このアルバムは、全作から1曲ずつと、彼等のベストとしても楽しめる。もちろん、演奏自体はライブ演奏ならではの迫力あるもので、これまでのスタジオ盤を凌駕する勢いの演奏である。 |
M1,LUGLIO,AGOSTO,SETTEMBRE(nero), (7月、8月、9月(黒)) ARBEIT MACHT FREI収録 M2,LA MELA DI ODESSA, (オデッサのリンゴ) CRAC!収録 M3,COMETA ROSSA, (赤い星) CAUTION〜収録 M4,ARE(A)ZIONE, (アレアツィオーネ) 即興演奏主体のアヴァンギャルド・ロック。 M5,L'INTERNAZIONALE, (インターナショナル) |
M1,7月、8月、9月(黒)は彼等の1作目からの曲で、周知の通り彼等のテーマ曲だ。大合唱が感動的ですらある。M2は、彼等の3作目からで、やはりこれも彼等の代表曲でもあり、冒頭の実際にリンゴを齧る音が聞ける。M3は、2作目からで、このアルバムは本当に彼等の総集編であると言える。ライブ演奏ならではの、スタジオ盤と違った即興演奏もあり、M4は、ライブにおいてのみ演奏される即興演奏である(スタジオ盤未収録)。M5は実際の革命歌を彼等なりに演奏したもので、この曲もスタジオ盤未収録。 デメトリオ・ストラトスのヴォーカル・パフォーマンスがどうだとか今更言うまでもないことなので省略するが、アヴァンギャルドな部分を細々と演奏するのではなく、あくまでロック的な躍動感、ダイナミズムを持って聞かせる彼等の力量をこのアルバムで再確認されたし。必聴!!!! |