AMON DÜÜL

クラウト・ロックの最古参、アモン・デュール。
様々な人(政治志向の人や、アート志向の人)が集合し、1967年頃から共同生活を送る。(リババリア地方のランドシュートという町で館を借りていたらしい。)その後ミュンヘンに活動の地を移す。かなりの人の入れ替わりがあったと思うが、ほぼ素人同然ながら(女性や子供も多数参加)強烈な意識の集合体のようなアルバムを、1968年制作。(69年リリース)
1969年には、政治的なアーティストと芸術志向のアーティストに分裂し、アモン・デュールU(ツヴァイ)が誕生。

2ndアルバムは1stと同一セッションからのもので、メンバーはほぼ同じ。(それこそ色々な人間が出たり入ったりしていたと思われる。)1970年にリリースされている。
1st制作直後にアインツ、ツヴァイと分裂し、かなりメンバーが変わったが、1971年事実上のラスト・アルバムを発表する。
その後、未発表テイクを集めた編集アルバムが2枚リリースされている。
ダモ鈴木談によると、その後ミュンヘンでヒッピー・ブティックを経営していたとの事。(音楽専科より)

『WE ARE ELEVEN ADULTS AND TWO CHILDREN WHICH ARE GATHERED TO MAKE ALL KINDS OF
EXPRESSIONS, ALSO MUSICAL』 (クリス・カーラーを中心とした結成時の宣言)

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簡単に、アルバムを紹介すると、1stは酒池肉林の断片繋ぎ合わせ。2ndは、その残り物。(福はあります)3rdは、祭の後の残響、寂寥感、虚無感っていう感じかな。
何だか、身も蓋もない紹介ですが、ぶっ飛んだ体験が出来るこは、間違いない.
オリジナルはたかが3枚ですので、全部買っちゃっても損はしません。ある程度の抗体は必要ですが。
個人的には、覚めた感じの3rdが大好き。もちろん、1stも2ndも良いんですがウタモノを希望される方には3rdが一番良いと思われます。その他編集版も2枚あります。
1stを聞いていると、この人達浅間山荘事件みたいな事件を起こさずに済んで良かったなーと思ったりもする。

 

PARADIESWÄRTS DÜÜL

ELLA BAUER -percussion,vocals,harp,bongos
RAINER
 BAUER -guitar,vocals
KLAUS
 ESSER -guitar
HELGE
 FILANDA -percussion,vocals,flute
ULRICH
 LEOPOLD -bass,piano
1971年発表の3rdアルバム(事実上のラスト・アルバム)。邦題:楽園へ向かうデュール。
録音時期は1970年の11月〜12月、ミュンヘン。OHRレーベル(タンジェリン・ドリーム初期等)からリリースされた。
このアルバムは、クリス・カーラー等はすでにツヴァイに移っていて(1st,2ndには参加)、RAINER BAUER、ULRICH LEOPOLD(PETERとは兄弟)を中心として制作されている模様。(しかし、実際のクレジットにはRAINERの名は無く変名が使われている)
M1,LOVE IS PEACE,(愛、平和、自由、そして調和)
M2,SNOW YOUR THURST AND SUN YOUR OPEN MOUTH,
(雪で喉を潰し太陽の祝福を)
M3,PARAMECHANISCHE WELT,
(平行機械学の世界)

M4,ETERNAL FLOW,
(永久の流れ) 先行シングルA面曲(ボートラ)
M5,PARAMECHANICAL WORLD,
(平行機械学の世界) 同じくシングルB面曲(ボートラ)
もしこのアルバムが、アモン・デュールじゃなかったら、と考えると、多分ここまでの評価も無かったように思える。自主レーベルなどからレア・サイケ・フォーク・バンドがこれを出していたら、「ああ。良い作品だな」ぐらいだったと思う。つまりは、アモン・デュールにおける『変身』が凄いのだ。前作までとのギャップが、蛹から孵る蝶のような感覚を受ける。
前作、前々作において、人間の普遍的無意識にアクセスするかのような混沌を示したのに対し、今作は打って変わって現実的だ。メンバーが数人ツヴァイの方に移ったという事もあったと思うが、妙な敗北感が感じられ心地良い。
1stが最高傑作によく挙げられるが、この軌跡を辿ってこその1stだと思える。リスナー側からだけの視点で見れば、こんな作品を作ってしまえば、それこそ1stへは戻れない。彼等の示した楽園(愛?)は、不可逆的な黄昏た終焉であった。

 

 

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PSYCHEDELIC UNDERGROUND

本来アルバム名は、何もないと思う。が、一般的にはこちらのほうが
馴染み深いとも思われるので。(このアルバムが紙ジャケ化したとき、ユニオンは別ジャケ特典付き)
それにしても、最初聴いた時と現在聴いている感想とでは全く違う。
最初聴いた時は、?とクエスチョン・マークが常にあり、むちゃくちゃのように
聴こえた。が、現在聴いていると、ひょっとして全て計算ずく?とも思ってしまう。
しかし、彼らの頭の中は、かなりイってしまっていたのも事実だろうし、うーん、悩んでしまう。
それほど、この編集感覚が凄い。クレジットされているメンバーの楽器を見てもらえれば分かるとおり、
打楽器系が多い。そして原始的なリズムだ。ビッチェズ・ブリュー並のリズムの魔力である。(比べるアルバムがおかしいですね…)
これを聴くと、縄文時代や、石器時代はこういった事が行われていたのかな?と思ってしまうぐらいだ。
そして、それに合わせたような唸り声、喚き声の数々。それを聴いていると裏切られるかのように
不意に違う場所へ移動させられる。これは、彼らの記憶なのか?夢や幻か、ユングの言う集合的無意識か?
聴けば聴くほど、謎は増え、神秘度を増していき、違う場所へ連れて行ってくれる稀有なアルバムである。


 

PLEASE WAIT!

 

 


AMON DÜÜL  U

政治的グループであった本家アモン・デュールから、音楽的指向が強いメンバーが
脱退し、ツヴァイ(U)として分裂。(1969年)ツヴァイの1stと本家の1stを聴けば
音楽的指向の差は一目瞭然。ツヴァイは本家と違い活動期間は長い。79年に解散する
ことになるが、一般的にはウルフ・シティまでが黄金期、個人的には初期の3枚が最も、らしい作品だと思っている。
90年代に入り再結成。


PHALLUS DEI

DIETER SERFAS -drums,electric cymbals
PETER LEOPOLD -drums
SHRAT -bongos,vocals,violin
RENATE KNAUP -vocals,tambourine
JOHN WEINZIERL -guitar,12-string-bass
CHRIS KARRER -violin,guitar,12-string-guitar,soprano sax,vocals
FALK ROGNER -organ
DAVE ANDERSON -bass
(GUESTS)
HOLGER TRÜ
LZSCH -turkish drums
CHRISTIAN BORCHARD -vibraphone

1969年発表の1st。本家の1stとほぼ同時期に発表。(ただし、本家1stの方は1968年録音)
邦題:神の鞭。東洋指向を全面に出したギター、パーカッションの殴打、ヴォーカルは歌というより
呪術的で即興風な語り調。(紅一点のレナーテ・クナウプはスキャット、ヴォーカル)
本家と違うところは、骨格がしっかりしている点で,全体の焦点が定まっている。

M1,KANAAN,中近東を思わせるギターと、民族色充分なパーカッションが合わさったエスニック・ロック。
疾走感も充分であり、ヴォーカルは演奏を際立たせるようなヘロヘロもの。混沌としながらも
曲としてはコンパクトな印象が強い。
M2,DEM GUTEN,SCHÖNEN,WAHREN,不安げな旋律と
コミカルなヴォイスが絡み合う。リズム隊がやけにしっかりとした演奏なので、曲自体は流れていくような
感がある。ギター・ソロの歪み具合も格好良い。
M3,LUZIFERS GHILOM,これも8ビートのリズムが
屈強な土台を築き、そこに民族色濃厚パーカッションが乗る。途中からはアヴァンギャルドな展開へ。
素っ頓狂なヴォイスが掛け声のように機能し、アヴァンぽくはあってもかなりしっかりした演奏が
流れを保ち、実に心地よい。
M4,HENRIETTE KRÖTENSCHWANZ,行進リズムにレナーテ・クナウプの
ヴォーカルが響く。小曲。
M5,PHALLUS DEI,空間的な音響にスキャット、ノイズにも似た喧騒感
が序盤を彩る。スピードをつけながら曲として展開し、ギターソロになる。このギターソロがまた
非常に格好良く、そのまま疾走する。電子音(?)、叫び声が合わさり、今度はベースがグイグイと
引っ張る。後半はヴァイオリン主導。展開は次第に変わっていくが、全体的に慌ただしさもそれほどなく、
ぐちゃぐちゃな方向へ行かず、あくまで曲として成り立っているところに好感が持てる。

筆者所有2001年REPERTOIRE盤にはボーナス・トラック5曲追加。
本家1stとは全くベクトルが違い、個人的に甲乙つけ難いアルバム。
焦点の定まった混沌と言うべきか、ダラダラ感もなく、それでいてサイケな非常に格好良い
演奏を聴かせてくれる。ジャケット・ワークも秀逸。傑作!