MATCHING MOLE

マッチング・モウル。
ソフト・マシーンの音楽はどんどん先鋭的なジャズに突き進み、ワイアットの持っているユーモアラス
な感覚はどんどん追いやられていった。結果、FOURTHレコーディング後ワイアットは脱退する。(クビ?)
ワイアットはより自由な場を求め、マッチング・モウルを結成する。


MATCHING MOLE

ROBERT WYATT -mellotron,piano,drums,voice
DAVID SINCLAIR -piano,organ
PHIL MILLER -guitar
BILL MACCORMICK -bass
DAVE MCRAE -electric piano(GUEST)

1972年発表の1st。邦題:そっくりもぐら。 カンタベリーシーン中心のメンバーで構成されている。
マッチング・モウルとはソフト・マシーンのフランス語であるMACHINE MOLLEを
英語読みにしたもの。この辺からして、ワイアットらしさが出ている。

それにしても、このアルバムはいささか悲劇的である。それは、
M1,O CAROLINE
あまりにも有名で素晴らしい曲のため残りの曲の存在はあまり語られない。
このM1は、ワイアットの歌志向がそのまま表され、実に見事なポップ・ソングになっている。
皮肉的な歌詞も実にワイアットらしい。(英国らしいと言うべきか。)メロトロンも素晴らしい。
そして、M2にそのまま繋がっていき、ワイアットの不思議なスキャットが流れる。この世ではない
ような空気と共に、マコ-ミックの存在感のあるベースがさらにこの曲の不思議さを高めてゆく。エレクトリック・ピアノも絶妙。
そして、
M3,SIGNED CURTAINへ。美しいピアノと切ないワイアットによる歌が流れるが、歌詞の内容が
『This is colus〜』等の説明が繰り返される。この辺が面白い。そして、途切れることなく
M4,PART OF
THE DANCEへ。今までと打って変わりフィル・ミラーのギターを中心としたアグレッシヴなインプロへ。
ここから、M3までの静寂は無くなる。激しいインプロの応酬のようになっていくが、ソフト・マシーン程
ジャズでもなく、前衛というほど前衛でもない、難解というほど難解でもないサウンド。
M5,INSTANT KITTENは、ワイアットのスキャットともに、再びジャムへ。フィル・ミラーのギターの歪みが
格好良い。そこから、ワイアットのメロトロンへ。このフルートのメロディ「?」がなんとも奇怪で面白い。
M6、DEDICATED TO HUGH,BUT YOU WEREN'T LISTENINGは、タイトルからして抜群。
ヒューへ捧ぐ、でも聞いていなかった。これまた、ジャズでもないインプロ。ヒューホッパー主導のジャズ・ロックに
嫌気がさしたという話もあるぐらいだから、この曲がそれに対する返答か?でも聞いていないというタイトルはお見事。
M7,BEER AS IN BRAINDEERは、もうノイズと言っていいかもしれない。非常に実験的な曲。
M8、IMMEDIATE CURTAIN、またしても不思議なムード感のあるメロトロン。

常にこのアルバムを聴いた後不思議な感覚がする。まず、あまりにも1〜3と4〜8が違う。
できることなら1〜3のような曲を集めた曲で一枚、4〜8のような曲で一枚作って欲しかった。
でも、名盤。


LITTLE RED RECORD

DAVE MCRAE -grahnd piahno,electric piano,hammond organ
ENO -synthesizer keyboard
ROBERT WYATT -drums,mouth
PHIL MILLER -guitars
BILL MACCORMICK -bass

前作と同年(1972年)に発表された2nd。
プロデュースは、ロバート・フリップ。これがその後のフリップ、イーノのコラボに
繋がる元となる。デイヴ・シンクレアが脱退するも、デイヴ・マクラエが本作ではメンバーとして
正式に参加。タイトル、ジャケットは、その後のワイアットの活動を覗えるような政治的なもの(?)
スタジオ盤では最後の作品。

不思議なコーラスとピアノ伴奏のM1,STARTING IN THE MIDDLE OF THE DAY WE CAN
DRINK OUR POLITICS AWAYからこのアルバムは始まる。
セリフと笑い声のSEとともに、本格的なカンタベリー・サウンドが聴ける
M2,MARCHIDES。
フィル・ミラーの歪んだファズ・ギターがリードしていく。エレクトリック・ピアノのバックでの進行が
面白い。階段が二つあって交差しながら逆に進むといった具合。非常に格好良い。
また、歌心豊かなワイアットの良い意味で不安定なドラムがなんとも言えない。
このバンドの魅力が詰まった大曲。
繋がるように
M3、NAN TRUE'S HOLEへ。ハットフィールドでもメロディが聴ける曲だが、
ここでは、もっとユーモアラスにSEも導入され、またやたらとサウンドが歪んでいる。なかなか重い。
さらに繋がり
M4,RIGHTEOUS RHUMBAへ。
ワイアットのセリフのような非常に不思議なヴォイスから始まる。ジャズ風味のジャム・セッション
が続く。ビル・マコーミックのベースがかなり印象的に重い。
何処に曲の切れ目があるのかわからないまま
M5,BRANDY AS IN BENJIへ。
エレクトリック・ピアノがハットフィールドのような見事な煌きを与えている。
M6,GLORIA GLOOMは、不思議なエコー(?)のような空間から始まる。
イーノが参加しているせいもあってか、かなりアンビエント色が強い。遮られるかのように
男女のセリフが挿入され、ワイアットのいわゆる抑揚のないワイアットらしいヴォーカルが乗る。
M7,GOD SONGは、ワイアットのヴォーカル曲でも筆頭の名曲だろう。
切ないヴォーカルと味わい深いアコースティック・ギター。この曲の土台でもあるマコ-ミックのベース。
至福の瞬間だ。
M8,FLORA FIDGITはフィル・ミラーのやや明るめのギター、デイヴ・マクレエの
カンタベリーらしいエレクトリック・ピアノ。重力感がなく飛ばされそうなくらいに気持ちのよい曲だ。
M9,SMOKE SIGNAL、彷徨うようなエレクトリック・ピアノから始まり、不思議な印象を絶えず
与えてくれる。アンビエント色のあるカンタベリー・サウンド。

前作は、ヴァラエティに富むというより、まとまり感がなかったのに対し、今作は全体的に
同じ色に貫かれている印象がある。聴きやすさは今作の方が上だろう。
前作に負けじとかなりの名盤。必聴!


 

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