BANCO DEL MUTUO SOCCORSO

バンコ・デル・ムトゥオ・ソッコルソ。
イタリアン・プログレシッヴ・ロックの代表バンド。意味は、共済銀行。
イタリアらしい、バロック音楽への傾倒とロックのアグッシヴさが見事に融合し、
ジャコモおじさんの声が響き渡る。あの風貌から想像できない声。
イタリアらしいカンツォーネ、オペラ、バロックを見事なまでに吸収し、決してイタリア以外では
生まれ得なかったバンドだろう。イタリアはPFM、アレアだけじゃない。


BANCO DEL MUTUO SOCCORSO

Vittorio Nocenzi -organ,synthesizer,clarinet,vocals
Gianni Nocenzi -piano,flute,vocals
Marcello Todaro -guitars,vocals
Renato D'Angelo -bass
PierLuigi Calderoni -drums
Francesco Di Giacomo -lead vocals

72年発表の『ファースト』。
あまりにドラマティックな幕開け(1st)である。クラシックな響きと、音数の多さが雪崩のように
襲いかかってくる。そこに、フランチェスコ・ジャコモのあのヴォーカルが乗るともうたまらない。
イタリア語の響き、バロック、新古典主義、オペラ、カンツォーネ、これでもか、とばかりに
イタリアの魅力が詰まったデビュー・アルバムである。そして、イタリアン・プログレを代表する
変形ジャケットでも有名だ。イタリアにおける貯金箱を表したものらしい。


M1、IN VOLO
(飛行中)で幕を開ける。不思議な空間を彷徨い、出会うものは
アコースティック・ギターが奏でる不思議な出会いの物語か。下に到着しようと語るその先に

M2、R.I.P(REQUIESCANT IN PACE)
安息の鎮魂曲がある。アグレッシヴなバンコの代表曲だ。
そこは、絶望の風景が広がる荒涼とした土地。オルガン、ピアノが圧倒的な音数で襲ってくる。
ジャコモのヴォーカルと共に、広がる静寂の世界。ピアノがドラマティックに駆り立てる。
神のみぞ知ることのできる風景は、人間には見ることができない圧倒的な絶望に対するレクイエム。

M3,PASSAGGIO
(経過)、不思議な男が鼻歌交じりに近づいてくる不思議なインストを挟み、
M4,METAMORFOSI
(変身)へ。クラシカルなピアノ・ソロからアグレッシヴな展開へ。
切り裂くようなギターと変拍子を多用したリズム。煌びやかなピアノが流れ、広大な土地を見渡すかの
ような、ブルーズ的なギターソロ。ジャコモのヴォーカルが始まると一気に引き込まれるが
その歌詞の内容はかなりシリアス。
そして、本作のハイライトでもある組曲
M5,IL GIARDINO DEL MAGOへ。
不安げなテーマをなぞりながら、重層的になっていく。ジャコモのヴォーカルがさらにその雰囲気、空間を
色怪しくする。静寂とアグレッシヴな空間が交差するかなりダークで深遠なる音世界だ。

M6,TRACCIA
(痕跡)エピローグとは思えないようなアグレッシヴな曲。

全体がストーリー形式になっているようで、実に見事な流れの大作だ。
そして、イタリアらしいドラマティックな展開もバンコが最上級である。バンコを初めて聴くならこれか、次作ダーウィンを。


 

PLEASE WAIT!

 

 


COME IN UN'ULTIMA CENA

Vittorio Nocenzi -organ,synthesizer,clarinet,vocals
Gianni Nocenzi -piano,flute,vocals
Rodolfo Maltese -guitars,trumpet,horn
Renato D'Angelo -bass
PierLuigi Calderoni -drums
Francesco Di Giacomo -lead vocals

1976年発表の5th。邦題:最後の晩餐
76年ともあってか、バンコも時代とともに移り変わる。
今アルバムでは、今までの仰々しいプログレ然としたサウンドが至ってシンプルに研ぎ澄まされており、
バンコの魅力が簡潔に凝縮されたバンコの代表アルバムとなった。
内ジャケは有名な最後の晩餐の風景画。テーマともなっている模様。

M1,....A CENA. PER ESEMPIO,何やら物語を予見させるような旋律から、
バンコらしいアンサンブルへ。ジャコモおじさんの声が高らかに響き渡れば、もう
最後まで聴くしかない。それほど吸引力に長けている。ジャジーな演奏も短いながらなかなか聞き応えあり。
流れるような、深遠なイントロダクション。

M2,IL RAGNO、
切れ味の鋭いイントロから、バンコらしい歌ものの展開へ。ピアノも
相変わらず響き渡る。シャープさの中にもクラシック・アレンジを溶け込ませる手法は脱帽だ。
ヴォーカル・ハーモニーもスピード感を加えている。

M3,E' COST BUONO GIOV ANNL MA,,,
、かなりストレートなバラード。
ピアノとジャコモの声が重なりまくる。叙情的なフルート、アコースティック・ギターが大変穏やかである。

M4,SLOGAN、
緊張感溢れるオープニングから、急転直下のアンサンブルへ。
バンコらしい激情的なクラシカル・ソング。
M5,SI DICE CHE I DELEINI PARLINO、B面へ移り、危機的な
状況を煽るようなイントロから、アンサンブルへ。
M6,VOILA' MIDA(il guaritore)、ELPのようなピアノによって
一気に畳み掛けてくるアグレッシヴさが介在する。セリフが挿入され、そのままのノリでジャコモが軽快に歌う。
セリフがややコミカルっぽくて重々しさはない。スピード感は抜群。

M7,QUANDO LA BUONA GENTE DICE
、ヴォーカル・ハーモニーから始まる、ややスパニッシュっぽい
疾走感が突き抜け、再びヴォーカル・ハーモニーへ。小品。

M8,LA NOTTE E' PIENA
、大草原を想起させるようなフルートから、アコースティックな叙情性を伴った
アンサンブルへ。
M9,FINO ALLA MIA PORTA、不可思議なイントロからスピード感のある
アンサンブルへ。非常に切れ味が鋭い演奏だ。ジャコモの歌と共に次第に大々的な展開へ移り変わってゆく。

歌詞がわからないので、ストーリー等はさっぱりわからないが、とりあえずA面だけは
必聴と言える。10分を超える曲はないが、かなりコンパクトになった分聞きやすいかもしれない。


...DI TERRA

VITTRIO NOCENZI -sintetizzatori,organo,piano,elettrico
GIANNI NOCENZI -pianoforte
RODOLFO MALTESE -chitarra elettrica,chitarra acustica, tromba in sib
PIERLUIGI CALDERONI -batteria,timpani,percussioni
RENATO D'ANGELO -basso elettrico
ALAN KING -sax contralto, flauto in do
FRANCESCO DI GIACOMO -titoli

1978年発表。以前もインストのサウンド・トラック(4th)を制作した彼らだが、ここではオーケストラと
共演し、本格的なインストゥルメンタルに挑戦。バンドの顔でもあるジャコモおじさんは、タイトル名作成だけでクレジットされている。
本来バンコの魅力は、フランチェスコ・ジャコモのイタリアらしいヴォーカリゼーション、圧倒的なメンバーの演奏能力にある。
アグレッシヴにたたみかける演奏を基軸にしながら、起伏に富んだドラマチックで重厚なサウンドが魅力だと思っている。
ジャコモのヴォーカルはないが、演奏自体はジャジーな部分も含めて、クラシカルに展開する。

先の展開を語るような印象的なM1、NEL CIELO E NELLE ALTRE COSE MUTE
キーボードがELPのように襲いかかりテンションを上げて突き抜けていく
M2、TERRAMADRE,
緊張感が常に漂い、ジャジーなトランペットが吹き荒れる。
M3、NON SENZA DOLORE、これもジャジーなサックス
とバックのオーケストラと絡んでゆき、静と動も明確にシタール系の楽器が印象的に作り上げる。

M4、IO VIVO
もオーケストラが重厚で、ど迫力。キーボード、ピアノの演奏がここでも緊張感を煽りまくる。
その後、静かにピアノや、ティンパニー、フルートが響き美しい前衛的な展開へ。再びギターがリードを取りながら
アグレッシヴなバンド演奏になる。さらに、叙情的にオーケストラが鳴り感動に包まれる。圧巻の一言。

M5、NE' PIU' DI UN ALBERONON MENO DI UNA STELLA
、煌びやかなピアノが大変美しい。
リズムが入り、繊細なフルートがリードする。ジャズ・ロック風味に展開していき、ジャジーなサックスが挿入される。
次第にオーケストラと交わり大々的なフィナーレに。

M6、NEI SUONI E NEI SILENZI
は、シンセが静かに物語を作っていくかのように広がってゆく。
決して大仰に展開せず、現音っぽい空間の歪みをピアノが見事に表現したりしていて、一筋縄ではいかない。

M7、DI TERRA
、前曲と連なるように、管楽器、リズムが一体となり、緊張感とともに始まる。
ジャズ・ロック、現代音楽等の要素を巻き込みながら変化していく。
M1のテーマ部分へと帰結するかのように美しいピアノとともに、オーケストラも煽り立てるように感動のクライマックスへ。

静と動のコントラストも絶妙で、クラシカルと先述したが、それだけではない驚異的なオーケストラ作品。
必聴!


 

PLEASE WAIT!

 

 


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